二週間という空いた期間には、再び噛みつき角ウサギ狩りをして過ごした。そして狩っては毛皮を作るということを繰り返し、魔石は冒険者ギルドに売って生活費の足しにした。
そして日常では日課の筋肉の鍛錬の他に、シエラとともに魔力増強と操作の訓練も行った。
これは瞑想と魔力操作をして消費を繰り返すのだ。これが地味にキツい訓練で私一人だったら
どんな事をやっていたかというと魔力で精緻な模様を描くのだ。これは古来より伝わる訓練法でボル師匠が、レベルに応じて描くべき模様が記された本を持っていたので借りて行った。
とっても神経を使う訓練で父がよく「筋肉の躍動を感じろ」とか「筋肉の繊維に意識を向けろ」と言っていたのを思い出した。
私は筋肉とはもっと大雑把なものだと思っていたが、どうやら思い違いをしていたのかもしれない。筋肉を鍛えるのも魔力を鍛えるのも種類は違うが方向性は同じなのかもと思う程度には考えさせられた訓練だった。
狩りや訓練の他にも、モノ作りの教本や資料本といったものを貪欲に読み、また書き写して消化していく。
十二日目にはジンが帰ってきたので、一緒に鍛錬をしたりして汗を流した。筋肉を鍛えあえる仲間が居るのは良いものだ。
そして十五日目には皮なめしの続きを行った。
しごき台に毛皮を取り付けてナイフで固まった薬剤を削り落としたり、固まったコラーゲン質をほぐしていくのだ。ここまでの状態でも問題なく柔らかいのだが、ここからさらに仕上げの作業も習った。垂木で木枠を作り皮を四方八方から張って細かな調整をしていく。そしてヤスリを当てたり、オイルを入れたりブラッシングをしたりして完成だ。
皮のなめしの完成までに十五日という期間がかかった。モノ作りってのは本当に大変な作業だ。そうやって完成しても、上の品質を目指すとなるとさらに手間がかかる。ボル師匠に最後に聞かれた。
「さて、モノ作りの大変さは分かってもらえただろうか?」
「はい」
「それでも、この道を行く気はあるかい? 今ならまだ引き返してもいいよ?」
「あります! 大丈夫です!」
豊かな生活のためという邪な思いから始めた、というか貰った才能だが、それでもこの道を進んでみたいという思いも改めて感じたのだ。知れば知るほど奥が深いと感じた。生涯を通して学び続けても良いかもしれない。この十五日という期間は非常に充実していたしね。
そんな私の覚悟を読み取ったボル師匠が大きな溜め息。
「そうか。わかった。なら全力で協力させてもらうよ」
こうして私の生産職への道は始まった。
とはいえ成人の見習いなので、やっぱり生活費は自分で稼がないといけない。そういう意味では冒険者との二足の草鞋状態は変わらないけどさ。