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第21話 魔法のカバン

 街に帰るまでに、一匹の噛みつき角ウサギを狩ることに成功。街に帰ったのはまだ朝と呼べる時間帯だったので、私は一度ボル師匠に挨拶に行くことにした。なのでジンとは互いに寝泊まりしている宿の場所を教えあって、そこで別れた。


 ボル師匠の住まいは工房区と呼ばれる街の外壁付近にある。


 ドアに付いているノッカーでコンコンと叩くと師匠のお弟子さんが出てきた。まぁ私にとっては年下の兄弟子に当たる男の子だ。ややこしいな。


「ボル師匠は居ますか?」

「あぁリサさん。はい。師匠なら工房にいますよ。ただ今はちょっと手が離せないと思います」

「そうですか。なら言付けだけお願い出来ますか?」

「良いですよ。わかりました」

「師匠から借りた三冊の本ですけど、書き写し終えたので次の段階に行きたいですって。噛みつき角ウサギの毛皮。未処理のものが五匹分ありますとも伝えて下さい」

「はい。わかりました。伝えておきます」


 さて、後は師匠からの指示を待つだけだ。


 毛皮は魔法のカバンの中にある。


 シエラのジィジであるポルオレルさんの魔法のカバンは、さすがというべきか。


 使い込まれているとは言え最高ランクの品だ。容量が大きくて時間経過がゆっくりになる機能まで付いている。


 ボル師匠に見せたら闇属性と土属性の最高傑作とのことだ。ただちょっとカバンの外観が可愛くはないという欠点はあるが……


 ちなみに土は重力を司っていて闇は空間を司っている。


 この二つがくっつくと不完全ながらも世界ができる。それを亜空間と呼び、魔法のカバンはそこに繋がっている。


 つまり魔法のカバンを作るということは一つの未熟で不完全とはいえ世界を作り出すことに他ならない。それは神の御業の一歩手前の行為であり、この世界を理解するうえでも大事な工程だと言われている。


 つまり魔法のカバンを作り出せる存在のことは亜神と呼び、国によっては保護している場合もある。


 まぁちょっとした笑い話として、それが嫌で逃げ出す亜神もいるとか。


 そして余所の土地でひっそりと生きていたりする……なんて話もあって、そんな彼らの職業が錬金術師だったりする。錬金術が神へと至るための御業だと言われる所以だ。


 魔法のカバンは魔道具じゃないのかという話もあるが、そのへんの線引は曖昧だ。


 魔道具は属性のある素材を使って作り出す道具だが、さすがに魔法のカバンはその道具の枠組みを越えすぎているというのだ。


 ボル師匠も作り方を知らないらしい。


 そんな彼が冗談交じりに「ヒーリアの爺さんなら知っているかもな」とは言っていた。


 ヒーリアの爺さんって誰だよって話だな。


 それは以前に酒場で働いていた時に酒場の隅でチビチビと安酒を飲んでいる錬金術師ってことで話題にした腰の曲がった、お爺さんのことだ。


 私が「まさか彼が亜神だなんてことはないですよね? 私、おしりを触られたことがあるんですけど?」と言ったらボル師匠が笑いながら「ご利益があるかもなぁ」なんて言っていた。


 まさか……ね?

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