私はジンの真意を聞くために、さらに踏み込んで話を聞くことにした。
「家を興したい……かぁ。おっきな夢だね」
「そうか? 男なら大抵は持つような夢だろ」
「そうかもね。もしその夢を私が叶えてあげようかって言ったらどうする?」
「ん? どういうことだ?」
「……私ね。ここの領地を持つ伯爵家の長女なの」
「それはいくら何でも……いや。そう言えば家出中って噂があったな」
ジンが私の顔をじっと見ている。
「うん。で、どうする?」
「どうするって?」
「私と結婚でもすれば成り上がれるよ?」
するとジンは声を出して笑った。
「あっはっは。なるほど。たしかにそうだ」
私はジンの態度が変わるかどうかを見定めようとした。けど彼の答えは「でもそれじゃあ俺の実力じゃあないな」だった。私は黙って彼に続きを話すように促した。
「俺はただ成り上がりたいんじゃない。自分の実力で上に行きたいんだ。試したい。自分という人間の限界を。その上で自分の家を興したいんだ。リサの家におんぶに抱っこじゃカッコ悪いじゃないか」
私は思わず「カッコ悪いかぁ。男ってのはどうしてこう体面を気にするかな?」と呟いた。するとジンはまた笑った。
「いやいや。大事なことだぞ。厚顔な上に恥知らずな人間にはなりたくないからな」
「でも、その体面やメンツを優先した結果、夢が敗れるかもよ? 良いの?」
「それならそれはもう、それが俺の実力と運だっただけのことだ」
「そう……もう一つ気になってることがあるんだけど」
「何だ?」
「私とシエラを心配して付いてきてくれるようだけど暇なのかなって。良いの? 成り上がりたいならそんなこと気にしてる暇はないんじゃない? いますぐ戦争に参加して手柄を立てに行く方がよくない?」
「周りで困ってる人を放って、自分の夢だけに邁進して、それで夢を叶えてもな」
「夢を叶える過程も大事ってこと?」
「どうだろう? そこまでは考えてないな。ただそうしたいからそうしたってだけだ。まぁもっとも、それほど困ってなさそうではあるけどな」
「いや。正直、助かってるよ?」
「そうか? ならいいんだけど」
ふぅむ。言葉と行動に矛盾……というか無駄はあるけど、人としては好ましい性質の人だな。そんな事を考えていた私にジンが笑いながら言った。
「街の人の領主家の評価って脳筋だって話だったんだけどなぁ」
「残念でした。私は知性派なのよ」
「そうか。まぁそうだな。女の子で、その上に守らなきゃならない妹分までいるなら警戒心も必要だよな。ところで俺は合格か?」
私は「うん!」と元気よ頷く。
「そうか。ところで、もし不合格だったらどうなってたんだ?」
「もちろん。ボコボコにして埋めてたよ」
「ボコボコねぇ。やっぱり脳筋だな。知性派という言葉が泣いてるぞ」
「あら嫌ですこと。地が出てしまいましたわ。おほほほほ」
「残念だよ。それがリサにとっての知性ある言葉なんだな……」
そう言って、泣き真似をするジンに私は大いに笑った。
ノリの良い人は好きだ。