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第14話 狩りに出かけよう

 私は生活費を少しでも稼げるように冒険者として積極的に活動を始めた。昼間は冒険者見習いとして働き、夕方から夜にかけては魔道具士になるための勉強だ。


 そんな生活が夏の間中続けられた。ちなみに冒険者見習いとして色々とやった。シエラも手伝えるような仕事をだ。


 シエラを五歳児と侮るなかれ。なんと彼女。精霊魔法が使えるのだ。まぁケダマが居るから当然と言えば当然なのだが。


 水の精霊に働きかけて公共のトイレ掃除をさせれば、あっという間にピッカピカに。


 それを知った冒険者ギルドの職員がシエラも冒険者にならないかと誘ってきた。なんと特別に入会金を免除するという。デメリットを感じなかった私はこれを了承。そしてトイレ掃除をして回った。報酬は二人分なので、かなり美味しい稼ぎになった。


 とはいえ、生活は最低限できる程度。これでは五年後に私は奴隷落ちしてしまう。授業料の金貨十枚を稼がないといけないからだ。


「魔道具用の素材採取もしないといけないな……」


 素材屋で購入すると高いのだ。それなら自分で採った方がいい。練習用に噛みつき角ウサギを狩らないといけない。


 闇の属性の性質は光の遮断。または静寂や安寧の性質を持っている。なので睡眠に関する道具を作ると捗るのだ。そこで過去の賢者が考え出したのが安眠布団一式だ。


 噛みつき角ウサギの毛皮で作る布団や枕。


 毛皮のベッドなので少々管理が大変だ。なので貴族向けの商品となっているが人気は高い一品だ。


 まぁ素人の私が作る商品では貴族向けにはならないんだけどね。せいぜいが少し羽振りの良い商人向けになる程度かな?


「さて、噛みつき角ウサギを狩るためには街の外にある平原に出ないといけない訳だが……」


 街の外は危険だ。でもシエラを置いてはいけない。というか彼女が置いて行かれるのを怖がるからな。私は頬をパチンパチンと叩いて気合いを入れ直す。


「守るって決めたじゃないか!」


 というわけだが、いちおう彼女の意思も確認する。


「シエラ。街の外に行くけど一緒に行く?」


 するとシエラはコクリと頷いた。


「魔物退治だから危険だけど、それでも行く?」


 すると、やはりコクリと頷いた。


 私は念の為に武器として木の棒を持った。木の棒はホウキの柄から拝借させてもらった。さすがに手ぶらわね。木の棒だって魔力でまとってぶん殴れば人だって殺せる武器になるのだ。とはいえ所詮は木の棒だ。それ相応でしかない。


 後はナイフだ。これは戦うためと言うよりは解体や料理用だ。まぁ戦いにも使えないことはないが。


 そんな感じで、本当にその装備で大丈夫かと問われそうな出で立ちで狩りに出かける。


 ちなみに噛みつき角ウサギの大きさは中型犬ほどで、普段は地面に穴を掘って生活しており、人間の足音に気がつくと向こうから襲いかかってくるという危険な魔物だ。


 別名を初心者キラー。


 高速で移動して額に生えた一本の角で人間の胴体を一突きにする。あたりどころによってはそれだけで死ぬというね。ちなみに夏の遅いこの時期は単体で活動しているが冬に向けて少々食いだめの時期になっているので、かなり積極的に狩りにでてくるはずだ。


 秋はつがいでいる場合が多く、冬は子供が居るので気が立っている場合がほとんど。という感じになっている。狩るならこの時期が良いだろう。


「よし。じゃあ行きますか!」


 私が気合を入れる為に頬をパチンと叩くと、私の後ろでもペチペチという音が聞こえた。振り返るとシエラも同じ仕草をしていた。真似っ子だ。


 シエラが将来、脳筋になったらどうしようかと今から少々不安だったりするのが私の今の悩みだ。

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