冒険者見習い。それが今の私だ。
「さってと。とりあえず酒場の仕事は辞めなきゃな」
まぁ冒険者になったら辞めるとは言ってあるし、今日は登録しに行くとも伝えてあるので女将も知っているだろうけど。それでも一応ケジメは付けなきゃね。
とりあえず今は冒険者ギルドで見習い向けの仕事を探すところだ。
「なになに。えぇっとぉ。屋根裏と煙突の清掃に公共のトイレ清掃と汲み取り。どっちも汚れるから嫌だなぁ。一日ベビーシッターなんてのもあるんだね。あっ要面接って書いてある。当然か。赤ん坊の面倒を見る人が変な人だと危険だもんね。他にも代書なんてのがあるな」
字が書けて綺麗であることと注意書きがある。しっかしどれもこれも冒険者に頼む仕事かと疑問なものばかり。
猫の手も借りたい忙しさなのかもしれない。居たらラッキーみたいな。
「用心棒の仕事があるね。あっこっちも要面接だ。注意事項に強面で腕が立つことって書いてある。私じゃ駄目だろうなぁ」
腕はそれなりに立つが、それでも女の子だもんね。舐められちゃうね。そんな感じで仕事を探していると街の外の仕事を見つけた。
「なになに。孫の面倒を見て欲しい? 詳細にも孫と遊んでやって欲しい? 要面接かぁ」
なんだこりゃ。
報酬は大銅貨三枚を下限にして出来高制。孫の笑顔の度合いで報酬額が決まるとある。見習いの仕事の中では良いほうだ。最低でも大銅貨三枚は貰える。
「どうしよっかなぁ」
子供と遊ぶだけの仕事かぁ。でも街の外なんだよな。
「うん。一人で悩んでいてもしょうがない!」
ここはギルド職員に聞くところだな。
「というわけで、この仕事なんだけどさぁどうなの?」
メリッサに聞いてみる。すると……
「あぁ、街の外に住む偏屈なエルフのお爺さんと、そのお孫さんの依頼ね」
「偏屈……」
「昔は高名な精霊使いの冒険者だったらしいわよ」
「へぇ。それで、他に情報は?」
「お孫さんの両親はどちらも死亡してるわ」
「おおぅ。マジで? 何故に?」
「どちらも冒険者だったんだけどね、ダンジョンの大海嘯に巻き込まれてね」
「大海嘯っていうと別名モンスターパニックだっけ?」
「そう。ダンジョンからモンスターが溢れ出す現象ね」
ヘビィだな。可哀想に……
「それで孫ということはエルフ?」
「えぇ。純粋なエルフの女の子。一度見たけど可愛いかったわよ」
「何歳なの?」
「私が見たときは一年ぐらい前で四歳ぐらいだったから、今は五歳ぐらいかしら」
「あら。可愛い盛り」
うぅん。これはちょっと興味あるかも。メリッサが言う。
「こっちにある情報は以上よ。別に裏があるような依頼ではないわ。孫に笑顔をということのようよ」
「了~解。偏屈爺さんの面接に合格できるかわかんないけど、行ってみる。ありがと」
「どういたしまして。行ってらっしゃい」
こうして私は街の外の小さな森へと移動するのだった。