私は、とりあえず冒険者ギルドへと足を運んだ。手には大銅貨三枚が握られている。ちなみに錬金術士ギルドと魔道具士ギルドへの加入料はボル師匠が立て替えてくれた。それも授業料に入っているのだそうだ。
「たのもー」
扉を勢いよく開けて中へと入る。時刻は昼間なのでギルド内は閑散としている。そのまま受付カウンターへ。
「あら。リサちゃんじゃない。どうしたのこんな時間帯に?」
「こんにちは。メリッサさん」
「今日も魔石を売りに?」
「ノンノン。違う違う。ふっふっふ。今日は違う用事できました!」
そう言ってドンッと大銅貨三枚をカウンターの上へ置く。
「さぁこれで私もギルド会員よ! 登録して!」
するとメリッサ嬢もノリノリで対応。
「おぉ! これでリサちゃんもギルドの一員! 見習いだけどね。でも、おめでとー!」
そう言って手をパチパチと拍手をしてくれる。私も「ありがとー」と言って応える。
「長かったねー。ここに始めて来たのが四ヶ月前だっけ?」
「そうなのよぉ。お金を貯めるのが、こんなに大変だとは思わなかったよぉ」
「ふふ。いい勉強になったでしょ?」
私は力強く頷く。
「うん!」
「ふふ。さて、それじゃあ冒険者ギルドの規定の話からしようかな」
そう言ってメリッサは真面目に通常の業務を始めた。
「冒険者ギルドには最低ランクのGから順に七段階あって最高ランクがAまであるの」
その辺は酒場でも聞いたので素直に頷く。
「依頼の失敗は規約違反ではないけど罰則があるから気をつけてね」
「罰則には何があるの?」
「そうねぇ。失敗の内容によるわね。例えば紛失や損壊の場合は弁償とかね。払えなきゃ奴隷落ち。支払い終えるまで奴隷のままよ。通常の魔物討伐や素材採取の場合は……まぁ生きて帰ってこれていれば任務期間中なら何度でも挑戦できるわ。その場合は仲間を募って再挑戦とかする人がいるわね。護衛の場合の失敗には、かなり厳しい罰則があって依頼人死亡で護衛者が生きて帰った場合は、取り調べがあるわ。その後は犯罪性が確認できなくても一発でギルド追放の上で奴隷落ちね。こっちは終身奴隷と言われて死ぬまで奴隷よ。だから護衛の仕事を受ける場合は命懸けだから慎重にね」
おおう。護衛の仕事が重い。って当然か。依頼人の命が掛かってるからな。途中で任務放棄とかありえないわな。
「規約違反だけど、そうね虚偽の申告とかがそれに該当するわね」
「虚偽の申告?」
「そう。さっき言った護衛の仕事で過去にね、依頼人を殺して、その上で完了印の偽造書を作って依頼を達成したと報告していた人がいたの」
「うわぁ……それってばどうやって発覚したの?」
「一度目で味をしめて三回を同じ手口でやったらしいんだけど、三度目に依頼人の家族が息子が帰ってないとして調査してみたら発覚したの。当時は大変な大騒ぎになったらしいわよ。ギルドの信用を失墜させたとして最終的には鉱山奴隷落ちして死ぬまで働いたそうよ」
うへぇ。怖いな。
「冒険者ギルドは税金の支払いとかを肩代わりしたりと色々と優遇してくれるけど、それに見合った代価はきっちり取り立てるわ。成功には報酬と報奨を。失敗には罰則や命をって具合にね。慈善事業じゃないからね」
そりゃそうだ。生温い対応なんてしてたら組織として舐められる。メリッサ嬢が真剣な表情で私に言った。
「それでも加入しますか?」
私はしっかりとメリッサ嬢に向かって答える。
「はい。加入します。見てて。成功者になってみせるから!」
なんて言ったって私が目指すのは生産者で成功して左団扇だからね。冒険者は通過点に過ぎんのだよ!
ふはは!