帝国兵たちが
「ワタクシたちを狙っているのが、ヘビ族の末裔……」
「だと思う。そう考えれば色々と辻褄も合うし。なによりヘビ族はカエル族を強く恨んでいるんだろう?」
ならこの襲撃も12年前の報復という考えで一応話はつく。
という事を言うとしたのだが、何故かソレを言うまでにアリアさんが感心した声をあげた。
「驚きました……タマちゃんさん、頭良かったんですね? てっきり脳内お花畑のセクハラクソ野郎かと思ってました」
「ねぇ? ここ数日で俺への扱い雑になってない?」
日に日に俺への対応が悪化している気がしてならない。
「どうやら酷い勘違いがあったようだね。いいかい? 俺は探偵だよ? 探偵の一番の武器はハートと頭さ」
「胸と頭ですか? ……エッチですね」
「なんで?」
一体なにが彼女の琴線に触れたのか、ぽっ! と頬を赤らめるムッツリ☆プリンセス。
まったく、このロイヤルビッチめ。
すぐにスケベに頭が切り替わるんだから!
ほんと初めて会ったときの清楚のイメージはどこへ行ったよ?
「『心はホットに、頭はクールに』それが探偵の一番の武器なのさ」
「あっ、タマちゃんさん! 見てください、アレ!」
「ねぇ、人の話聞いてる?」
せっかくカッコイイ台詞を決めているのに、アリアさんはガン無視して地上の帝国兵の方を指さした。
言われた通り地上へ視線を下ろすと、そこには変わらず爆炎と一緒に人影がフライング・ヒューマンしていた。
よしよし、今日も元気に帝国兵がお空を飛んでいるな。
とほっこり♪ しかけて気がつく。
「あれ!? お空を飛んでるの、俺が作った
「ゴーレムです! 5メートル級の大型ゴーレム1体があの不敬罪スライムを蹴散らしています!」
アリアさんの言う通り、どこから出て来たのかファンタジーアニメでしか見た事がないような5メートルサイズの大型の泥人形が、爆弾ボディースライムを襲っていた。
スライムは「ピギーッ!?」という断末魔と共に爆発し、ゴーレムの身体を爆散させていくが、
――ズモモモモモモモモッ!
ゴーレムは近くの土を自分の身体にくっつけ、すぐさま再生する。
「ナニアレ、ズルい!? 反則では!?」
「アレは……間違いありません。ヘビ族が得意としていたと言われている『土』創生魔法ゴーレム・ゴーレムッ! 使用者の魔力が尽きない限り戦い続ける不死の戦士です! どうしてココに!?」
「チクショウ、俺の予想が当たったってワケね」
「予想って……もしかして本当にヘビ族の!?」
「それしか考えられないべ」
俺はスライムたちを千切っては投げ、千切っては投げを繰り返すゴーレムを目視しながら改めて覚悟を決める。
何かしらの隠し玉はあるとは思ってはいたが、まさかゴーレムとは。
あの様子からして、再生するゴーレムを倒すことはほぼ不可能だろう。
まだ爆弾ボディースライムは99万体ほどいるが、今後のことを考えるとあまり数を減らされるのは勘弁願いたい。
しょうがない。
気は進まないが【プランB】でいこう。
「アリアさん! あのゴーレムを動かしている奴の居場所は特定できる?」
「はい、大丈夫です。魔力の流れを辿れば……見つけました!」
「よし、じゃあ着陸だ。敵の大将の顔を見に行こうか」
「えっ!? の、乗り込むんですか!? 敵地のど真ん中ですよ!?」
「大丈夫。爆弾ボディースライムはアリアさんはもちろん、創造主の俺は襲わないから」
「で、でも……」
「大丈夫。俺に考えがあるから」
アリアさんは空中の上でしばし逡巡したあと「うぅ~っ!?」と小さく
「ど、どうなっても知りませんからね!? マッポちゃん!」
「ポコポコちんちーんっ!」
ロイヤルおティムティムのマッポが卑猥に
するとゴーレムの影に隠れるような形で、桃色の髪をした生意気そうな小娘を発見。
「アリアさん、あのエロ漫画なら確実に汚いオッサンに『分から』されそうな
「はい! あのエロ漫画なら確実に汚いオジサンに『分から』されそうなあの娘がそうです!」
「なんか今、すげぇ不名誉な事を言われている気がする……あっ!」
眉根をしかめていた桃色の髪の少女が俺達の存在に気づいた。
それと同時にゴーレムが俺達を捕まえようと動き出す。
「マッポちゃん!」
「ポコ……ポコ……ちーんっ!」
マッポはゴーレムの指先を紙一重で躱しつつ、なんとか地上へ着陸。
間髪入れずにアリアさんが魔法で結界を張り、ゴーレムの攻撃を弾いていく。
そんな俺達を前に、あのエロ漫画に出てきそうな生意気な小娘が勝気な態度の表情で俺達に声をかけてきた。
「まさか目的の人物が自分の方から出て来るとは思わなかったし。アタシ、超ついてるぅ~♪」
「アナタがヘビ族の……」
「あれ? 知ってたの姫様? ふぅーん……流石はカエル族の王族ってところかな。お兄様が警戒するのもちょっと分かったかも」
そう言って桃色の小娘は、その壁のように薄い胸を逸らしながら、瑞々しい果実を彷彿とさせる唇を動かした。
「アタシの名前はアリシア・ウエストウッド。【魔王】の娘にしてヘビ族の姫よ」
「【魔王】の娘……つまりアリアさんの従妹か。なるほど、だからカエル族の王族しか解除できない結界を解除できたワケか」
「あら? そっちの男はもしかして異世界から来た【例の男】かしら?」
「……俺のことも知ってるワケ?」
もっちろ~ん♪ と上機嫌に微笑みながら、煽るようにニマニマと笑みを溢すメス豚、もといアリシアちゃん。
ゴーレムが居るからなのか、余裕綽々の態度でペラペラと喋り続ける。
「アンタがこの世界に来てくれたおかげで【計画】を進めることが出来るからね。もう感謝しかないわよ」
「計画? なにそれ?」
「教えてほしい? でもダメ~♪ お兄様に『絶対に喋るな!』って言われるもん! 誰が下等な異世界人に教えるもんか!」
真っ赤な舌を『んべっ!』と突き出すなり、ピロピロと煽るように左右に振るうアリシアちゃん。
おいおい、なんて『分からせ』がいのあるメスガキなんだ?
クソゥ! ストレッチパワーが股間に集まって仕方がねぇぜ!
「今はまだアンタを殺すワケにはいかないから、今日は見逃してあげる。けど姫様はダメぇ~♪ 姫様はアタシと一緒に来て貰いま~す♪」
そう言ってアリシアちゃんが手を振り上げた。
ソレを合図にゴーレムが物凄い勢いで、俺達を守っている結界を殴り始めた。
途端に苦し気な声をあげるアリアさん。
「んぐっ!? お、重い……」
「大丈夫、アリアさん?」
「ちょっと大丈夫ではないです……。策があるなら、なるべく早くお願いします……」
「ガッテン承知の助」
さて、ここで俺の持っている武器を『おさらい』しよう。
甘いマスクに甘い声、甘い考えに甘い見通し。
数え上げればキリがないが、あえてココは1つコレを挙げさせて貰おうと思う。
――1日1回だけ使える魔法。
アリアさんが言うには、俺のこの【1日1回だけ使える魔法】は規格外のモノらしい。
珠子も言っていたが、この魔法は俺が頭の中で想像しているモノを具現化することが出来る。
それは生物だろうが無機物だろうが関係ない。
キチンと頭の中で想像できていれば、俺はソイツを具現化することが出来る。
それはつまり、この世の
ではここで、改めて俺が想像したモノを確認していこう。
一昨日は『落とし穴』などのブービートラップ。
昨日は100万匹の爆乳ボディースライム。
そして今日は……まだ1回も使っていない。
「珠子から女の子を相手にする可能性がある事を聞いていたからな。念のために残しておいて正解だったぜ」
俺は両手でテキトーな印を結びながら、思考を加速させる。
……大丈夫、問題ない。
イメージは完璧だ。
「この技を芥見●下センセイに捧げる。……壊れちゃっても文句は言わないでくれよ?」
「何をワケの分からないことを! 壊れるのはお前らだぁぁぁぁぁっ!」
「タマちゃんさん、はやく!」
もう限界です! と叫ぶアリアさん。
それと同時に彼女の張っていた結界が砕け散った。
瞬間、俺は間髪入れず勝利の言葉を口にした。
「――領域展開」