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第16話 オッパイは2つあるので『おっぱいズ』というのが正しいと思います!(もうナニを言っているのか分かりません……)

 南東の森での準備を終え、2人してドロドロの土塗れになって学院に戻ってきて30分。


 時刻はおそらく露出魔たちのゴールデンタイムと言われている午後11時少し過ぎ。


 規則正しい生徒たちは夢の世界へ大冒険している頃だろうか?


 そんな生徒たちが眠る静かな夜の中、俺とアリアさんは彼女の自室に戻って、




「そ、それではお言葉に甘えてお風呂に入らせて頂きますが、くれぐれも……く・れ・ぐ・れ・もっ! 中は覗かないでくださいましね?」




 ――頑張ってお風呂に入ろうと努力していた。




「……本当にお風呂に入らなきゃダメなの?」

「当たり前です! 淑女たるもの身体は常に綺麗にしておくべきです!」

「でも妹のリリアナちゃんは俺が使い魔の時はお風呂に入らなかったよ?」

「あの子は【お風呂キャンセル界隈】のトップを独走する子ですから、別にいいんです。それよりもホラ、後ろを向いてください!」




 あいよ、と軽く返事をしながらクルリッ! と彼女に背を向ける。


 現在俺は【使い魔契約】の1メートルという縛りのせいで、アリアさんと一緒にお風呂場の脱衣所へとやって来ていた。


 どうやらアリアさんは1日1回お風呂に入らないと気が済まない女性らしく、乙女の意地で羞恥心を武装化し、俺が居るにも関わらずお風呂へ入ろうと努力していた。




「タマちゃんさん、目を瞑ってください。……つむりましたね? で、では今から服を脱ぎますので絶対に目を開けて振り向いてはいけませんよ! 絶対ですよ!」

「それは『絶対に振り向いてね♪』というフリですか?」

「フリじゃありあせん! 本気です!」




 アリアさんは俺が目を瞑りピクリとも動かないことを確認するなり「ふぅ……よし!」と気合一閃、スルスルと服を脱ぎ捨てて行った。


 背後に感じる彼女の気配と衣擦れの音が、最高のショーの開幕ブザーとなって俺の聴覚を刺激してくる。


 お姫様のロイヤルストリップショーを間近で鑑賞できないのは残念で仕方がないが、これはこれで♪


 俺がアリアさんの一挙手一投足の気配に全神経を注いでいると、流石に無言で男の前で着替えるのは恥ずかしくなったのか、唐突に彼女が口をひらいた。




「そう言えば、金色水晶様が別れ際に気になる事を言っていましたよね?」

「気になること? なんだっけ?」

「ほら、アレですよアレ。人前に居るときは絶対に『カモン』と呼んではいけない――」




 ――瞬間、磁石に引っ張られるように俺の身体がアリアさんの身体めがけて飛んで行った。




「うおっ!?」

「タマちゃんさん!?」




 なにを!? と彼女が口を開いた時にはもう遅い。


 抗えない力により俺は、




 ――ぱふんっ♪




 アリアさんの豊かなお胸にダイブしていた。


 あっ、柔らかい……❤




「おっふ♪」

「ひにゃぁぁぁぁぁっ!?」




 お姫様の猫のような悲鳴が耳朶を叩く。


 そのまま神に生まれて来たことを感謝している俺を無理やり引き離すと、1メートルギリギリの距離まで避難し、スッポンポンのまま唇をワナワナッ!? させ、




「な、なななななっ!? なにををををををををっ!?」

「ち、違う、違う!? ワザとじゃない、ワザとじゃないの! なんかね、アリアさんは『カモン』って言った瞬間に身体が引っ張られて――」




 と、俺が口にした刹那。


 ものすごい勢いでアリアさんが俺の突進してきた。




「きゃっ!?」

「うぉっ!?」




 2人の悲鳴が脱衣所に木霊する。


 そしてアリアさんは……全裸のまま俺の股間に顔面ダイブしていた。




「~~~~~~~~ッ!?」

「あっ!? く、口をモゴモゴさせないで!? 危ない! 色んな意味で危ない!?」




 俺の股間にルパンダイブしたアリアさんが瞳をグルグル回しながら『違うんです、コレは!?』とでも言いたげに口をモゴモゴさせる。


 その度に彼女の湿った吐息が俺の愚息に降りかかり――危ない!?


 アリアさんの貞操が危ない!?




「は、離れるんだアリアさん! ま、間に合わなくなっても知らんぞぉぉぉ!?」

「プハッ!?」




 下手くそなモノマネを演じる俺を他所よそに、『あっ、そうか! 離れればいいのか!」と気づいたらしいアリアさんが慌てて股間から顔を上げる。


 そのまま首筋まで顔を真っ赤にしたまま、「ち、違う! 違うんです!?」と言い訳のように早口でまくし立ててきた。




「わ、ワザとじゃないんです!? 身体が勝手に!? 信じてください、お願いします!?」




 今にも泣き出しそうな表情で必死に言い訳を口にするアリアさん。


 目尻に浮いた涙が妙に扇情的で……うん。


 正直ちょっと興奮した。


 ここで『アリアさん……信じてたのに……』と被害者ヅラして堂々と彼女を弄るのも楽しそうだが、切羽詰まったアリアさんを見ていると流石に可哀そうになってきたので、俺はS極に目覚めようとしている息子をたしなめながら優しい口調で彼女の剥き出しの肩を叩いた。




「大丈夫、信じるよ。というか俺も数秒前に同じ現象に遭遇したばっかりだしね」

「タマちゃんさん……っ! ありがとうございます。今まで『ヤッベ、とんでもねぇ犯罪者が異世界からやってきたな』とか思って申し訳ありませんでした」

「えっ? そんなこと思ってたの?」




 今語られる衝撃の真実!


 どうやら俺はアリアさんにヤベェ犯罪者だと思われていたらしい。


 心外だ! 俺が今まで異世界に来てやった事と言えば、無垢な女の子の唇を奪ったり、無垢な女の子の着替えを覗いたり、ムッツリスケベな女の子に顔面おっぱいダイブしたり、ムッツリスケベな女の子に股間の匂いを嗅がせたり……おやおやぁ?


 文字にしたらとんでもねぇ犯罪臭がしてきたぞぉ?


 コレ、国が国なら打ち首獄門じゃねぇの?




「というか、なんでこんな事になるワケ?」

「おそらくですが、これも【使い魔契約】の弊害へいがいかと……」

「【使い魔契約】の弊害?」

「はい。ワタクシの推測では『カモン』と口にすると、言った方に身体が引っ張られる――」




 瞬間、またしても物凄い力で俺の身体がアリアさんの方へ引っ張られた。


 またかよ!? と思うと同時に、



 ――ぽよん♪



 と素敵な擬音が俺の頬を包み込んだ。


 ……うん。




「ナイスおっぱい♪」

「イヤァァァァァァッ!?」




 ――パンパンパンパンパンッ!




 アリアさんの絶叫と共に、彼女の往復ビンタが俺の頬を捉える。


 マジかよ?


 パフパフして貰えた上にご褒美まで貰えるのかよ?


 サービス精神旺盛すぎない、彼女?


 将来は都心のクラブへ出稼ぎに行く気かい?




「あぁっ!? ごめんなさい、タマちゃんさん! つい反射的に!?」

「気にしないで。むしろ、ありがとう」

「なんで今、お礼の言葉を口にしたんですか?」




 何故かドン引きするアリアさんに爽やかな笑みを浮かべながら、身体を離そうとするのだが……いかんな。


 いいビンタを貰い過ぎたせいか、膝が笑って言う事を聞いてくれないや。


 まったく、彼女は未来の世界チャンプか?


 あの右、世界を狙えるよ。




「しかし、これで俺にも分かったぞ。要するにコレは俺とアリアさんが急に離れたとき用のセーフティ機能って奴か。つまり俺かアリアさんのどちらかが『カモン』と口にすると――」




 瞬間、今度はアリアさんの身体が俺の方へと引っ張られ、


 ――気が付くと、彼女は再び俺の股間にルパンダイブしていた。




「こうなるワケね。勉強になるなぁ」

「むぐぅぅぅぅ~~~っ!?」

「あん♪ ちょっ、喋らないで? 今デリケートタイムだから?」




 アリアさんが狂ったように俺の股間で叫び続ける。


 おかげで俺のモスラがキングギマラへと成長してしまったではないか。


 まぁしょうがないよね? 全裸の美少女の、しかも全力のおっぱいタッチとあっちゃ股間も独立愚連隊が如く固くそそりっちゃうよね?


 うん、俺は悪くない。女体が悪い。




「いやぁぁぁぁぁぁぁぁっ!? ムクムクしてる!? ムクムクしてるぅぅぅ!?」

「すまんアリアさん。俺の息子が大変失礼なマネを」

「お、親が親なら子も子だよ!」




 股間から顔を上げ、犬歯剥き出しでムガーッ! と怒り狂うアリアさん。


 怒っていてもカワイイなぁ♪


 キスしてやろうか?




「いいですか、タマちゃんさん!? これからはカモ――【例の言葉】は言わないように!」

「あいあいさー」




 ぐるるるるるるるるっ! と威嚇しながら鋭く俺を睨むアリアさん。


 仮にもご主人様に向けていい瞳じゃなかった。




「しかし、マジ・・題がまた増えたよ、勘弁してく――あっ」




 瞬間、三度アリアさんが俺の股間にダイブした。




「むぐぅぅぅぅぅ~~~~っ!?」

「ワザとじゃない! ワザとじゃないの!?」




 彼女のくぐもった悲鳴と共に恨みがましい視線が俺を襲う。


 連続する言葉でもダメなのか!?


 なんて融通の利かない法則なんだ、最高かよ?


 これで時たま間違ったフリをしてアリアさんで遊べるぞ!


 俺は内心狂喜乱舞しながら申し訳なさそうな顔を作りつつ、彼女に向かって謝罪した。


 そんな俺を見ても怒りが収まらないのか、アリアさんは股間から顔を上げ、




「分かりました! もう分かりましたから! タマちゃんさんは何も言わないでください!」

「了解しました!」

「とりあえず、もう『カモン』は禁止です!」

「アリアさん、それは!?」

「えっ? あっ!?」




 ヤバイッ!? と思った時はいつだってアフター・フェスティバル。


 気がつくと俺の身体はイギリスが誇る最強サイクロン掃除機並みの吸引力をもって、




 ――ぷにょん♪




 とアリアさんのお胸に吸い込まれていった。


 この顔を包み込む素晴らしい弾力……うん。


 今なら俺、牢屋にブチこまれても文句は言わないぜ?


『いやぁ、やっちまったぜ~。でも後悔はしてないぜぇ~っ!』と笑顔で言える自信がある。




「まいったね、どうも♪」

「ひぃぃぃにゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?!?」




 俺はアリアさんの絶叫をBGMに、しばしの間至福の時間を堪能するのであった。

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