カエル族とヘビ族の歴史を聞かされた、その日の晩。
いつの間にか4人から1人に戻っていたリリアナちゃんは、歩き疲れたのか晩御飯もそこそこに、さっさとお風呂に入って寝間着に着替えて、自室のベッドの中でグーグーと寝息を立てていた。
その顔はとても幸せそうで、どうやら今日はいい夢を見れているらしい。
俺はリリアナちゃんの寝顔にほっこり♪ しながら、
「いやぁ、悪いね? 服、脱いで貰っちゃって?」
――制服を着込んだ謎のカエル族の女子生徒に、全裸で拘束されていた。
「ふむ? 乳房は女性と比べて発達していなんだな。体毛は……ちょっと薄いな? これは文献に無いぞ。個体差によるモノなのか?」
時刻は午前0時少し前。
俺はメガネを身に着けたオカッパ頭の女子生徒に、魔法で全裸に剥かれると、同じく魔法と思われる光の縄で両手足を拘束され、床に寝転がされていた。
……えっ、ナニコレ?
「チ●チンは……む? 文献に載っていたモノより小さいな。これは確か……粗チンと呼ばれるモノだったか?」
「誰が粗チンだ! ふざけんなよ!? 俺のシャイボーイは戦闘時になるとスゲェんだよ! 光る雲をブチ抜いてスパーキングするんだぞ! アイヤイヤイヤイヤーするんだぞ!?」
何気に失礼なことを口にするオカッパメガネに全力で食って掛かる。
こんなモノが俺の全力だなんて死んでも思われなくなかった。
「というか、お嬢ちゃん誰よ!?」
「おっと、申し遅れた。
「居ねぇよ!? マッドサイエンティストはどこにでも居ねぇよ!」
ヤバイ匂いがプンプンするオカッパメガネから距離を取ろうと頑張るも、光の縄が肌に食い込むばかりに1ミリもその場から動けない。
どうなってんの、コレ!?
「無駄だ。その空間にキサマの両手足を固定させて貰った。もはや吾輩から逃げることは不可能」
「クッ!? な、何が望みだ!? 金か!?」
「そんなに怯えるな。吾輩はただ確認したいだけだ」
「か、確認……?」
「あぁ」とオカッパメガネは曇りなき眼で大きく頷きながら、
「果たして男は本当にお尻にチ●チンをぶち込まれると妊娠するのかどうか、確認するだけだ」
「助けて!? 誰か助けて!? いやぁぁぁぁぁっ!?」
生娘のような叫び声が俺の口からまろび出る。
アカン!?
この子、俺の四次元ポケットを開発する気だ!?
純粋なまでの貞操の危機が、すぐそこまで迫っていた。
「起きろリリアナちゃん! 使い魔のピンチだぞ!? ……クソ、ダメだ!? 全然起きねぇ!?」
「姫様は1度眠ると中々起きないことで有名だからな」
これで邪魔者は入らない、と粘着質な笑みを浮かべるオカッパ。
ヤバイ、ヤバい!?
このままでは俺の肛門がいらない特技を覚えてしまう!?
「ふむ? この位置からではチ●チンをお尻に突っ込めんな? よし、チ●チン切るか」
「アカーン!?」
マジで洒落にならないことを口にし始めるオカッパ。
ムリムリ!?
チ●チンは取り外し不可能だから!
そんな俺の心の叫びを無視して、オカッパメガネは何やら呪文を詠唱し始める。
と、同時に俺の身体にありえない程の力が溢れかえって来た。
「これは……イケる!?」
本能的に分かる。
おそらく午前0時を超えたのだろう。
今なら1日1回の魔法が使える!
「うぉぉぉぉぉっ!?
「な、なにっ!? 吾輩の拘束魔法を解除しただと!? しかも無詠唱で!?」
男とはこんな事が出来るのか!? と驚くオカッパを無視して、俺はベッドで横になってるリリアナちゃんを全裸のまま回収した。
その一瞬の隙を縫うように「行かせるか!」と自室のドアの前へと陣取る。
クソっ!? リリアナちゃんと半径1メートルも離れられない影響のせいで、時間を喰った。
「出入口は吾輩が抑えた! もう諦めろ!」
「チクショウッ!」
俺はドアの前で陣取るオカッパから踵を返し、窓へと駆け出した。
「ふんっ、馬鹿め! 窓から逃げようたってそうは行かん! 窓を開ける一瞬の隙にまた拘束してやるわ!」
そう言って俺に向かって杖を構えるオカッパ。
もう服を回収している暇もなければ、悠長に開けている暇もない。
――突っ込むしかない。
「えぇい! 肌が切れるくらいなんだ! チンチンを切られるよりマシだ!」
行くぞっ!
「生命を……燃やせぇぇぇぇぇっ!?」
俺は雄叫びをあげながら、窓へと全力で突っ込んだ。
瞬間、間髪入れずにパリーンっ!? とガラスの砕ける音と「なんだと!?」とオカッパの驚く声が素肌を叩いた。
砕け散る窓ガラス。肌を撫でる冷たい夜風が心地よい。
「俺は自由だぁぁぁぁぁっ!」
「待て! 逃げるなチンチンッ!」
俺達の居た部屋の中で怒声をあげるオカッパ。
その声に眠っていた寮生たちが目を覚ましたのか「なになに~?」「何の騒ぎ~?」と寮内が騒がしくなっていく。
振り返ったら負けだと判断し、フルチンのまま俺は森の中へと駆け出した。
己の貞操と息子を守るために――っ!