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第5話 金城玉緒の元気玉は『どこへ』消えたのか?

 タマキンが異世界に飛び散ったことが発覚した、3時間後の山の中。


 アリアさんが【使い魔契約】の破棄に奔走している間、学園長室を飛び出した俺とリリアナちゃんは、我が失われたタマキンの行方を捜すべく、全てを見通す水晶があると噂の祠めざして尊み☆ラストスパートをかけていた。




「急げ、リリアナちゃん! 間に合わなくなっても知らんぞぉ~っ!?」

「ま、待ってよタマちゃ~ん!?」




 ヒィコラッ!? 言いながらモタモタッと俺のあとをついて来るリリアナちゃん。


 どうやら運動は苦手らしい。




「玉ナシだからってカリカリし過ぎだよぉ~。もっと落ち着こうよぉ~?」

「玉ナシ言うな! 今デリケートなんだよ!」




 ナチュラルに人のウィークポイントを狙撃してくる金髪巨乳。


 もしかしたらこの子は魔法使いじゃなくて、天性のスナイパーなのかもしれない。




「というか歩くのは苦手なら、ほらアレ? 魔法で空を浮いて移動すればいいじゃん?」

「実はボク、魔法が苦手で……お空とべないの」

「魔法使いとは一体?」




 魔法の国のお姫様にあるまじき発言だった。




「ちなみに興味本位で聞くんだけどさ?」

「なにぃ?」

「リリアナちゃんの得意魔法って何?」

「えっとね? お花を出す魔法!」




 やだ、可愛い♪




「他には?」

「あとはねぇ? お花畑を出す魔法と、お花のブーケを作る魔法!」




 ドヤァッ! とその豊かな胸元を誇張するようにふんぞり返るリリアナちゃん。


 おいおい? 俺があと数年若ければ告白してフラれている所だぞ?


 気を付けてくれよな!




「アレとか使えないの? 炎の玉を出したりとか、氷の弓矢で相手を凍らせたりとか?」

「そんな危ない魔法、使えないよぉ」




 むりむりっ! と首を横に振る金髪巨乳。


 途端に彼女のお胸のマスクメロンがぷるんっ♪ と艶めかしく揺れた。


 ふーむ、どうやら彼女はお花を出す魔法と魅了魔法が得意らしい。


 谷間という名のブラックホールに視線が吸いついて離れないや!


 この吸引力……イギリス製最強サイクロン掃除機ダ●ソンに匹敵するレベルだ。




「タマちゃんは?」

「んっ? なにが?」

「タマちゃんは何か得意な魔法とかないの?」

「得意な魔法かぁ……」




 う~む?


 これは難しい質問だなぁ。


 チラッとリリアナちゃんの顔色を盗み見る。


 その顔は期待に胸を膨らませていて……仕方がない。


 子供の夢を守るのも大人の使命!




「実はね? 俺の世界では魔法は30歳を超えないと使えないんだよ」

「そうなの?」

「そうなの。しかも清らかな魂と身体を持っていないと使えないんだ」

「へぇ~」




 リリアナちゃんは俺の居た世界に興味を持ったのか「はいはいっ! しつも~ん!」と目をキラキラさせながら口をひらいた。




「はい、リリアナくん」

「向こうの世界の魔法はどんな感じなの? どんな魔法があるの?」

「そうだなぁ……『テレビ』と呼ばれ箱に映像を映す魔法に、遠くの人とお話できる『携帯電話』という魔法。あとは八股かけているクセに処女を装う『クソビッチ』という魔法かな」

「タマちゃん、ビッチって何?」

「純粋な男心を弄ぶ、悪い魔法のことだよ」

「ほぇ~」




 ヤッベ。


 何も知らない女の子にテキトーな知識を教え込むの、超気持ちいい♪ 


 クセになりそうだ!


 例えるならアレだ。真っ白でキレイな雪原に全裸でダイブした時のような背徳感だ。たまんねぇ!


 俺が危ない快感に背筋をゾクゾクさせていると、目の前に大きな祠が現れた。




「あっ、着いたよタマちゃん!」

「ここがアリアさんの言っていた祠か……」




 俺は視線だけでリリアナちゃんに『行くよ?』と問うと、彼女も『了解であります!』とばかりに小さく頷いた。




「よし」




 いざ出陣じゃぁぁぁっ! と心の中で気炎を吐き散らかしながら、俺は祠の中へ1歩足を踏み入れ――




「待ってたわよ~ん♪ 異界の勇者たま~♪」

「「うわっ!?」」




 ――ビュンッ!




 祠の中から金色の玉が勢いよく飛び出て来た。




「あっ、金の玉だ! タマちゃん、金の玉だよ!」

「なにっ!? もしかして……俺のタマタマか!?」

「ごみ~ん♪ 球子たまこ、勇者たまのタマタマじゃないのぉ~♪ 期待させちゃってメンゴ♪」




 これは体毛よ~ん♪ とオネェ口調の金の玉……もとい水晶がその場でピカピカ輝きだす。




「す、すごいよタマちゃん! この金の玉、しゃべるよ!?」

「むぅ~っ! 金の玉じゃなくて球子だってばぁ~♪」

「もしかして、この元気玉がアリアさんの言っていた!?」

「そうっ♪ アタイこそ全てを見通す金色こんじき水晶の球子ちゃんよ~ん♪」




 やけにフレンドリーな金の玉『球子』が俺達の前に現れた。


 球子はふわふわと空中に浮きながら、俺をまっすぐ見つめて、




「アナタが今世の勇者キンジョー・タマオね~ん♪ 球子、待ってたぁ~♪ 1万年と2000年前からずっと待ってたぁ~♪」

「あ、アナタと合体したい……ッ!?」

「球子さん、タマちゃんのこと知ってるの?」

「当たり前だのクラッカー♪ 球子は全てを見通す水晶ちゃんだよぉ~?」




 当たり前じゃ~ん♪ とその場でクルクル回る球子。


 ……なんかやけにキャラの濃い水晶が現れたな?




「じゃあ俺達がココに来た理由もお分かりで?」

「モロチン♪ あっ、間違えた♪ もちろんっ!」

「どうしようリリアナちゃん? 俺、このタマタマ大好きかもしれない」

「タマタマじゃなくて球子さんだよ、タマちゃん」




 どうしよう?


 この元気玉を俺の半身として玉座に迎え入れてやろうかしらん?


 なんて考えていると、珠子の眼がピカピカと光り輝き始めた。


 かと思えば、




「球子ビーム!」




 ビ――――ンッ!


 珠子の眼からビームのようなモノが飛び出した。




「このビームの先に勇者たまのタマタマがあるわ~ん♪」

「マジでか!? でかしたタマ!」

「南東の方角だね」




 どうやらこのビームの先に俺のセンチメンタル・ボールがあるらしい。


 この世界に来て、ようやく希望らしい希望が見えてきやがった!




「でもぉ~、気を付けてねぇ~? 勇者たまのタマタマには世界を滅ぼしかねない程の魔力が詰まってるからぁ、悪~い人が血眼で探しているっぽいよぉ~♪」

「えっ、ナニソレ!? 玉緒、聞いてない!?」

「それじゃ、もしかしたらタマちゃんの金の玉はもう誰かに捕られた後かもしれないってこと?」

「球子、そこまでは分かんな~い♪」




 能天気にクルクルとその場で周りだすキンタマコ。


 おいおい?


 何でも見通すんじゃなかったのかよ、このゴールデンボールは?




「そんなに気になるなら、球子じゃなくて勇者たまの魔法で調べればいいと思うよ~ん♪」

「はっ? 俺の魔法?」

「ありり~♪ もしかして気づいてない感じぃ~?」




 うっそ~ん♪ とムカつく声をあげる珠子。


 まったく、この空飛ぶ猥褻物は何をテキトーな事をほざいているんだ?


 確かに俺の世界では30歳まで童貞を貫くと魔法使いになれると言われているが、俺はまだ24歳だぞ?


 魔法の『ま』の字すら使えねぇよ。




「おいコラ、珠子よ? テキトーな事を言うなよ? じゃあ何か? 俺が今ここで魔法を使ってリリアナちゃんを4人に分身させる事も出来るってか?」

「出来るわよ~ん♪」

「いやいや!? 出来るワケねぇだろ!? ……出来たけど」

「「「「うわっ!? ナニコレ!?」」」」




 ――ポンッ!


 俺がリリアナちゃんに向かって片手を突き出し『分裂しろ!』と念じた瞬間、リリアナちゃんが4人に分裂した。


 ……使えちゃったよ、魔法。




「お、おっぱいがいっぱいだぁ!?」

「「「「おぉ~っ! ボクがいっぱいだよぉ~っ!」」」」




 分裂したリリアナちゃん達がキャッキャツ! 騒ぐのを横目に、キンタマコは「ね?」と俺に向かってウィンクを飛ばしてきた。




「球子の言った通りでしょ~♪」

「ま、マジか!? 俺、魔法が使えるのか……ハッ!? じゃあこの力を使ってこの世界に散らばった俺の大秘宝ワ●ピースをこの場に召喚すれば!?」

「それは無理ぽよ~♪ 勇者たまの大秘宝の魔力が強すぎて、召喚は無理~♪ 地道に探すしかな~い♪」

「クッ!? 我がムスコながら何て面倒な奴らなんだ!」




 まぁいい。


 俺にも魔法が使えることが分かったのは収穫だ。


 これで仮に元気玉が誰かに捕られて移動していたとしても、常に自分とムスコの位置を把握することが出来る。


 さっそく俺とタマタマの距離を把握するべく、再び魔法を使用しようとして――




「あっ、ちなみに勇者たまの魔法は1日に1回しか使えないわよ~ん♪」

「ソレを先に言え!?」

「「「「ところでボク、どうやったら戻れるのぉ~?」」」」

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