「うぉぉぉぉぉっ!?」
ガバッ! と勢いよく跳ね起きる。
心臓が街中で女子大生のパンチラに遭遇した時のようなバクバクッ!? と高鳴っていた。
「ゆ、夢……? 全部夢だった?」
「あっ、起きた?」
「うぉっ!?」
突然横から女の子の可愛らしい声が聞こえてきて、知的でクールな俺らしくなく慌てた声をあげてしまう。恥ずかしい……。
視線を横に滑らせると、そこには金色に輝くブロンドの髪と真っ白な肌をした美少女が俺の顔を覗き込んでいた。
確かこの子の名前は……
「えっと……リリアナ、さん? だよね?」
「うん、リリアナ・ウエストウッドです。よかった、ちゃんと目を覚ましてくれて……」
心の底から『ホッ』とした表情を浮かべるリリアナさん。
そんな彼女を横目に、俺はキョロキョロと辺りを見渡していた。
木造造りの部屋に大きなクローゼットだけの飾り気のない部屋。
そこに質素なベッドがポツンと置かれていて、そのベッドを俺が占領しているらしい。
「あっ、ここは学園から支給されたボクの部屋だよ。――って、どうしたの!? 急に突っ伏して!?」
「夢だけど、夢じゃなかったぁぁぁ~……」
プチト●ロ状態で大きく溜め息を溢す。
そうだ。俺はすっげぇ可愛いコスプレイヤーの女の子の手を握ったら、何故か異世界に飛ばされたんだったわ!
いや待て、俺?
本当にここは異世界か?
もしかしたら俺の勘違い、もしくは聞き間違いで、リリアナさんは『ここは日本です』って言ったんじゃないのか?
そうだ、そうに違いない!
よし、まずは確認だ!
「あの、リリアナさん?」
「リリアナでいいよ?」
「じゃあリリアナちゃんで。その、さ? もう1度確認したいんだけど……ここどこ?」
「えっと、リバース・ロンドンにある魔法女子学院の学生寮だよ」
「リバース・ロンドンwww」
どうやら俺は本当に異世界にやって来ているらしい。
すげぇ、全然実感が湧かねぇ。
「キンジョーさんはその……男なんですよね?」
「いかにも。わたくし、男の子です! あと玉緒でいいよ」
「男ッ!? じゃあやっぱりタマオさんは『神の国』から来たんだね! すごい、一体どんな所なの『神の国』って!?」
リリアナちゃんが女体を前にした男子高校生のように興奮気味に俺に詰め寄って来た……って、うん?
「神の国?」
「うん! 伝承ではこの【リバース・ロンドン王国】の男の子たちは12年前の魔王との闘いで、その功績が認められ神々が住まう『神の国』に移住して行ったって教科書に記されているよ!」
「ナニそれ(笑) その言い分だとさ? この国に男の子が1人も居ないみたいじゃんwww」
「??? 居ないよ、男の子?」
「えっ?」
「おそらくタマオさんは、この国で唯一の男の子だと思う」
何か今、すげぇ事を言われた気がする。
「えっ? 男の子、居ないの? 1人も?」
「うん。居ない」
「全員、女の子?」
「全員女の子」
「じゃ、じゃあどうやって子供を作るの?」
「??? 子どもはコウノトリさんが運んできてくれるよ?」
冗談じゃなかった。
本気で言っている瞳だった。
「い、一応確認なんだけどさ? リリアナちゃんはどうやったら子供が出来るか知ってる?」
「むぅ~っ! タマオさん、ボクのことをバカにしているでしょ?」
もちろん知ってるよ! とその豊かな胸元をバルンッ♪ と自慢気に揺らしながら、リリアナちゃんは口を開いた。
「神様にお願いするんだよね? そしたらコウノトリさんが運んで来てくれるんだよ!」
「……マジかよ」
間違いない。
もう間違いない。
この世界の女の子は……無知だ。
ムチムチボディーの無知無知少女だ。
間違っても俺みたいな薄汚れた腐れ雑草ゴミムシが関わっていい相手じゃない。
「どうしたの、タマオさん?」
「い、いや何でもない。……って、あれ!? 俺、いつの間に着替えたっけ?」
気がつくとスーツから寝間着のようなモノを着せられていた。
「えっとね? 失礼かとは思ったんだけどね? タマオさんが着ていた服、汗でドロドロだったからね、寝ている間に着替えさせて貰ったよ。あっ、服は今乾かしてるから安心してね?」
「えっ!? リリアナちゃんが着替えさせてくれたの!?」
うんっ! と汚れの無い笑みで頷くリリアナちゃん。
どうやら異世界初日で俺は美少女相手にチ●コを晒してしまったらしい。
おいおい?
国が国ならSWATが突入しかねない事態だぞ!?
というかリリアナちゃん、すげぇケロっとしているんだけど?
俺のポコチン見たのに、すげぇケロっとしてるんですけど!?
「あっ、ヤッベ。なんか男として情けない気分になってきた」
「タマオさん?」
「その……粗末なおティムティムでごめんなさい」
「おティムティム?」
瞬間、リリアナちゃんは「あぁっ!」と軽く手を叩いた。
「おティムティムなら今頃、外を元気に飛び回っていると思うよ」
「ナニそれ怖い!?」
外を元気に飛び回っているって何だ!?
この世界には野生のおティムティムが居るのか!?
いや、野生のおティムティムって何だよ?
自分で言ってて意味わかんねぇ!?
「……ごめん、リリアナちゃん。なんか頭痛くなってきたから、もう1回寝てもいいかな?」
「あっ、そうだよね。神の国からやって来て疲れてるよね? うん、分かった」
そう言ってリリアナちゃんは席を立った。
とりあえず今後の方針については明日ジックリ考えよう。
窓の外に視線をやると、辺りはすっかり夜になっていた。
「タマオさん、電気は消した方がいい?」
「あぁ、お構いな――くぅっ!?」
んっ? というようにリリアナちゃんが振り返る。
ライトグリーンの下着に包まれた大きなお尻をコチラに向けながら。
何故彼女は今、当たり前のように脱いだ?
より正確に言えば、何故俺が居る部屋の中で唐突にスカートを床に落とし、大きな安産型のお尻を艶めかしくコチラに向けて突き出しているのか?
極めつけはアレだ、俺がこの場に居るにも関わらず、何ら恥じらう様子もなくショーツを晒しているこの状況だ!
「り、リリアナちゃんは何で急に服を脱ぎ始めたのかなぁ?」
「??? 寝間着に着替えるからだけど?」
もしかして神の国には寝間着の概念が無いのかな? なんて事を口にしながら、リリアナちゃんはニコッ♪ と微笑んだ。
「気にしないで? いつもの事だから」
「いつも!?」
なんてこったい!?
彼女はいつも男にケツを差し出しているというのか!?
なんて17歳だ!?
最高かよ!
とんでもない衝撃と共に、俺の下半身のグングニルが怒髪天を貫き始めたので、俺は慌ててベッドにうつ伏せになった。
そんなある種の完全防御形態の俺に向かって、リリアナちゃんは当たり前のようにストリップショーを再開し始めた。
「すぐ終わるから、ちょっと待っててね?」
そう言ってリリアナさんは靴下を脱ごうとお尻をコチラに向けてお辞儀のような体勢になった。
瞬間、彼女のパンツがよりクリアになって俺の前に現れた。
眩いばかりの白い生足も文句ナシ、最高だ。
もはやショーの開幕には十分すぎる盛り上がりである。
凄いな、彼女?
最初から最後までクライマックスじゃないか!
足先から靴下を脱げば、あとは白いブラウスだけ。
この白のブラウスが良い味を出していた。
服を着ているのに大事な所だけは薄布1枚というアンバランス感……
「くぅぅ~っ!?」
痛い、アソコが痛い!
恥ずかしながら俺の魚肉ソーセージが今にも爆発せんばかりにパンパンに膨れ上がり、腰が不自然に浮き上がりそうになっていた。
俺は無理やりベッドに腰を押し付けた。
「……? あ、あれ?」
瞬間、妙な違和感が股の間を走り抜けた。
なんだろう?
何かが足りないような……?
その姿が奇妙に映ったのだろう。
リリアナちゃんは頭の上に「?」を浮かべながら不思議そうに俺を見てきた。
「何をしているんですか、タマオさん?」
「ちょっ、ちょっと寝る前のストレッチをね! ハハッ!」
自然と千葉県の某埋め立て地にあるワンダーランドのマスコットキャラクターのような甲高い声が唇からまろび出る。
どうして人間はやましい事があるとネズミの化け物みたいな声が勝手に出るんだろうね? ふっしぎぃ~♪
リリアナちゃんは小首を傾げながらそれ以上は追及せず、ゆっくりとブラウスのボタンを外し始めた。
1つ1つボタンが外れていく様は、一種の上質な映画を見ているような満足感を俺に与えてくれた。
「あっ! そう言えば明日、学園長がタマオさんに話があるらしいから、少しだけ時間を貰ってもいいかな?」
「いいとも~♪」
彼女が何かを言っていたが、俺の意識は『おっぱい』という名の谷間に釘付けだった。
下のショーツはライトグリーンなのに、上のブラジャーは花柄と上下不揃いのデザインだったが、それが余計に生活感を俺に与えてくれる無性に興奮したことを後世のためにココに記しておこうと思う。
リリアナちゃんがシャツを脱ぐ。触れたら壊れてしまいそうな華奢な肩が顔を出す。
そして下着姿のリリアナちゃんが完成した。
時間にしたら僅か2分にも満たないストリップショーだった。
だが俺はこの光景を生涯忘れないと思う。
今なら通りすがりのオッサンに「死ね!」と言われてもニコニコしながらハグを求める自信があった。
「よし、着替え完了! 明日は学園長とのお話が終わったら、学園の中を案内してあげるね?」
そう言って寝間着に着替え終えたリリアナちゃんは、頬に笑みを
――俺の居る、ベッドの中へと。
「ちょっ!? 何やってんのリリアナちゃん?」
「へっ? 何って、寝るんだけど?」
さも当たり前のようにそう言いながら、ギュッ! と俺の身体に抱き着いてくる。
途端に彼女のお胸に搭載された核弾頭が、
――むにゅっ♪
と俺の二の腕のあたりで柔らかく潰れてててててっ!?
「やっぱり2人で寝るとちょっと狭いね?」
「な、何故同じベッドで眠るのでしょうか?」
「何故って……だってベッドは1つしかないし」
しょうがないよ、と耳元を甘い声をこぼすリリアナちゃん。
その時、俺は気づいた。
俺の衣服を剥ぎ取ったり、突然目の前でストリップショーを始めたり、男と一緒に寝ようとしたり……間違いない。
彼女には……羞恥心がない!
おそらく『男』というドスケベモンスターと触れてこなかった弊害だろう。
この子は自分の魅力にとんでもなく無頓着だ!
「それじゃ、おやすみ。消灯魔法ライト・ライト」
リリアナちゃんが呪文のような言葉を短く唱えると、部屋の明かりがフッ! と消えた。
それから数秒と経たないうちにリリアナちゃんの方から規則正しい寝息の音が聞こえてきた。
「えっ? ほんとに一緒に寝るの? マジで?」
困惑する俺を他所に、さっさと夢の世界へ出航するリリアナちゃん。
そして俺の試される夜が始まった。