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わたし髪を切りました

 髪を切りました。

 春なのに・・・・・・。

 あなたのせいで、髪を切ったのです。

 あなたとのお別れは、何の前触れもなくやって来ました。そう、あなたとの恋の想い出に、ピリオドが打たれてしまったのです。


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留実子るみこさん。ぼくは君の長い髪が好きなんだ。いつまでも切らないでいて欲しい」

 悟朗ごろうはわたしの髪を、やさしく撫でながらそう言った。

「悟朗さんのために、わたし髪を伸ばし続けるわね」

「ありがとう。いつか結婚してくれるかい?」

「もちろんだわ。わたし、十二単じゅうにひとえを着てみようかしら」

 以前テレビの番組で観た、十二単の婚礼衣装が頭の中に鮮やかに浮かんでいました。


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 わたしは髪を切りました。

 長くて美しいみどりの髪でした。

 まるで夏空の花火のように、ハラハラと髪の毛が広がって落ちて行きます。

 制服の警察官がやって来ました。

榊崎さかきばら留実子さんですね。あなたを暴行罪の現行犯で逮捕します」

 わたしは髪を切りました。

 悟朗さんの新しい恋人の髪を、電車の中で・・・・・・。

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