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第15話 女神がついに降臨する

 俺は温泉に向かうべく、そして温美あたみは準備に向かうべく、邪魔なゾンビの群れを掻き分けて進んだ。


 ───と、その時、姿してしまった。


 それは大げさな表現だったかもしれない。

 しかし、その光景はまさにそうとしか形容できなかった。


 ノロノロとあてもなく彷徨さまようゾンビの群れ。

 その真っただ中に、見事なモデル立ちでりんとした女性が佇立ちょりつしていたのだ。


 仕立ての良いスーツを着こなしたその姿は、暗闇の大海原で、ポツンと突き出た岩山の上に力強く咲き誇る一輪のユリのようだった。

 そのユリには一筋の月光が差し込まれ、淡く優しい光を自らが放っているかのように清らかな輝きに満ちていた。


 俺はその女性の姿に目を奪われてしまった───。


 ───そしてその女性と目が合ってしまった。


 俺は咄嗟に視線を伏せようとしたが、視線を逸らせず、女性と見つめ合ってしまった。


 ───いや。


 ───「見つめ合う」というのは少し違う。


 何が違うのかと言うと、その女性は俺と目が合うと、とても驚いたように目を丸くしたが、次の瞬間、もの凄い形相で俺を睨みつけてきたのだ。

 そしてその眼光をまともに受け止めてしまった俺は、まるで蛇に睨まれた蛙のような状態になり、視線を反らせられなかったのだ。


「な、なあ、温美。あの女性、俺を思いっきり睨んでくるんだが……」


 俺は思わず温美に声を掛けた。


 だが、温美は「女性? 女性ってどこにいるんスか?」と怪訝な様子だった。


「いや、あそこだ。俺の正面にいるあの女性だ」


 俺はそう言ったが温美はますます怪訝そうだった。


「いや、有真ありまセンパイの正面には女性どころか、誰もいないっスよ?」


 ───!? な、なんだと───……!?


 そ、それではあの女性は俺にしか視えない───とでも云うのか───……?


 俺は冷や水を浴びせられたように背筋に寒気が走った。




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【後書き】


 ついに女神さまが登場しました~!

 ଘ(੭ˊ꒳ˋ)੭✧

 お待たせ(?)してしまってすみません。

 ここからお話のテンポが上がっていくかと思います。

 皆さまに「面白い!」と思っていただけるよう頑張ります!

 (๑•̀ㅂ•́)و✧

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