───バスで移動すること8時間。
日の出の頃に俺たちは、とんでもない山奥でバスから降ろされた。
「すごい山奥っスね。本当にこんなところに温泉旅館があるんスか?」
バスを降りた
それもそのはず───。
目的の温泉旅館はここからさらに山道を3時間も歩いた先にあるからだ。
「ここから山道を3時間も歩くなんて、本気と書いてマジと読むヤツじゃないっスか。そんな温泉旅館にどうしてわざわざ行かなくちゃいけないんスか?」
さすがの温美もうんざりといった様子だが、ふっふっふっ。温美よ。甘いな。
そんな奥地にある温泉だからこそ良いのではないか。
「そうした人目につかない場所で密かに湯を湛える温泉こそ、本来の温泉の姿なのだ。そうした温泉を探し当て、その湯に
俺は熱弁したが、温美は「いや、まったく思わないっス。理解できないっス。そして理解したいとも思わないっス」といつも通り冷めた態度だった。
まったく困ったヤツだ。温美は仮にも温泉饅頭を製造販売する会社の社員なんだ。少なからず温泉の恩恵を受けているのだから、ちょっとは興味を持って欲しいものだ。
───だがまあいい。
俺は温泉に
「いいから行くぞ、温美。ここでグズグズしてはいられないんだ。早く温泉に
それを知らされると温美はにわかに気色ばんだ。
「クマ? クマってベアーのクマっスか?」
森の中でクマと言われて、他にどんなクマがあるのか気になったが「そうだ。ベアーのクマだ。テディでもプーでもなく、本物のクマだ」と答えてやった。
すると温美は突如、脱兎の如く駆け出し、俺の荷物をフン捕まえると乱暴に俺に押し付けた。
そして次に自分の荷物を引っ掴むと「
温美は大きい動物が苦手だった。
特に大型の犬が嫌いで、温美曰く「アイツ等は小さい生き物をオモチャか何かと勘違いするんス」とのことだった。
小柄な温美は、おそらく過去によほどひどい目に遭ったのだろう。
そんな温美は、クマという動物が危険であるということはもちろんだが、それ以上に犬よりも大きい動物が辺りに潜んでいるかもしれないということに恐怖を覚えたようだ。
いつもスンとしている温美の焦る様子をもうちょっと見ていたいという軽い嗜虐心を覚えたが、俺も早く温泉に
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【後書き】
私の小説を読んでいただき、本当にありがとうございます。
(⋆ᵕᴗᵕ⋆)ウレシイデス
今回のお話はどうでしたでしょうか?
引き続き皆さまに「面白い!」と思っていただけるよう頑張ります。
本気です。本気と書いてマジと読むで頑張ります(笑
(๑•̀ㅂ•́)و✧
因みに温美の脳内妄想はあと2話先です♪
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