「ごめん。仕事が長引いちゃって・・・・・・」
ぼくは今日こそ恋人の
「ひどい。何時間まっていたと思うのよ!」
泣き出す小百合をなだめようと、ぼくはポケットから慌あわてて指輪を取り出そうとした。それがいけなかった。
勢い余って、テーブルの上のシャンパンの瓶を盛大に倒してしまったのだ。彼女はびしょ濡れになったドレスのまま席を立った。
「もう帰る!」
そう言うと小百合は店を出ていってしまった。
「ちょ、ちょっと待って・・・・・・」
ぼくはひとり
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翌日ぼくは気を取り直して彼女の家に電話をかけた。
「はい
彼女の声だった。
「ぼく・・・・・・
「ああ・・・・・・」
「昨日は本当にごめん」
「あの・・・・・・」
「わかってる。いいんだ、ぼくが全部悪かったんだから。だから機嫌を直して欲しいんだ」
「機嫌直してって言われても・・・・・・」
「実は言い出せなかったことがあるんだ」
「なあに?」
「ぼくと、その、結婚してください!」
「・・・・・・本気なの?」
「もちろんさ!こんなぼくでよければきみを生涯愛し続けて行きたいんだ」
「ありがとう・・・・・・って言っていいのかしら」
「ぼくのプロポーズ、受けてくれるんだね」
「突然だったから・・・・・・」
「それじゃあこれからきみに会いに行ってもいいかな」
「・・・・・・おまかせするわ」
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ぼくは玄関のチャイムを鳴らした。小百合がドアを開けてくれた。
「健児。どういうつもり」
「どうって、なにか問題でも?」
「お母さんすっかりその気になっちゃってるわよ」
「え、なんだって?」
小百合の肩越しに、シングルマザーの母親が、ほんのり頬を染めて立っている。ぼくは知らなかった・・・・・・。
「わたしも信じられなかったわよ。まさか実の娘がライバルになるなんてねえ」
なんと小百合と母親の声が瓜二つだったなんて・・・・・・。