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クリスマスは恋の予感

「先輩・・・・・・」

 バイト仲間の後輩、萌ちゃんが熱い眼差しでぼくを見つめてきた。

 これは恋の予感・・・今年のクリスマスは楽しくなりそうだ。


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


 ぼくは瞬時にクリスマス・デートのスケジュールを思い浮かべた。

 まず誘い方はこうだ。「いまスケート場でメチャ綺麗なイルミネーションやってるんだって。一緒に行かない?」

 待ち合わせはスケート場の前で15時にしよう。なぜスケートがいいのかって?・・・・・・決まってるじゃないか。誰に気兼ねすることなく、堂々と手をつなぐことができるからだよ。

「まったあ?」と萌ちゃんがフワフワのマフラーかなんかをして現われる。

「そんなことないよ。いま着いたばっかりさ」(実は1時間も前から待っている)

 まずはスケート靴を借りよう。スケート靴は妙に紐ひもが長いブーツ丈の靴だから、きっと萌ちゃんはぎこちなく紐を結び始めるに違いない。

「やってあげるよ」

 そう言ってぼくは彼女の靴紐を結んであげる。(拓先輩って優しいのね)と萌ちゃんは心の中で感動しているはずだ。

 萌ちゃんと手をつないで滑ってあげよう。この時、手をつないではいけないという人もいる。いくらか弱い女の娘でもだいたい40kgぐらいは体重があるはずだ。もしも彼女が転倒したときには片手でその体重を支えることになってしまう。でもその時はその時だ。一緒に転んでしまえばいい。そして二人で顔を見合わせて笑うのだ。親密度200%アップ間違いなしだ。

 滑りっぱなしでは彼女が疲れてしまうので、定期的に休憩を入れてあげよう。そして温かい飲み物を買ってきてあげる。ふたりでフーフーいいながらココアなんか飲んでみよう。これで萌ちゃんのハートもぽっかぽかに温まるはずだ。

 待ち合わせを15時にしたのには意味がある。そう、スケート場の閉店時間はだいたい午後5時ぐらいだ。午後6時に夜景の見えるレストランを予約しておいたのだ。

「萌ちゃん。お腹すいたね」

「うん」

「食事して行こうか。いいレストランを予約しておいたんだ」

「気が利きますね拓先輩。さすがですぅ」(だろう?)

 真珠のようなシャンパンの泡を眺めながら乾杯。美味しい料理に舌鼓を打つ。食後のコーヒー。そしておもむろに緑の包装紙に赤いリボンを結んだ箱を取り出す。

「これ・・・・・・萌ちゃんに似合うと思って」

「わあ」

 萌ちゃんが目をまん丸に見開く。


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


「先輩・・・・・・」

 バイト仲間の後輩萌ちゃんが、熱い眼差しでぼくを見つめた。

「なに?」

「25日空いてたりしませんよね?」

(来たぁ!)「うん?とくに用事ないけど」

「本当ですか!じゃあ萌とバイトのシフト替わって下さい」

(え?)「い・・・・・・いいけど」

「やったあ!拓先輩って本当に優しいんですね。よかった。これで彼氏とクリスマスデートができます」

「あっそう・・・・・・。ス、スケート場なんかいいんじゃない。イルミネーションやってるみたいだし」

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