「あらいたの、気付かなかったわ」
「オレも、っていうかやっと厄介払い出来たのにこんなとこで会うなんてなぁ、継千帝の面汚しがよ」
二人の言葉に肩がピクリと反応する
大丈夫、いつものことだ
気にする必要もなにもない
私は、継千帝を出走した身なのだから
「……今は御霊陰陽局に身を寄せているのか」
そんな嘲笑すらすることなくこちらへと目線を一瞬向けて心底どうでも良さそうに独り言のように呟いたこの人は私の兄
次期継千帝家当主になるのは確実と言われるほどの実力者、継千帝鳳炎だ
「こんな弱小局にあんたみたいな奴とはいえ継千帝が属してるなんてあまりにも……本当に一族の恥だわ」
「違いねぇな」
そしてこうして言葉にして私を落としてくるのは長女の風麻姉様と、次男の弓近兄様の二人だ
「そりゃ悪いことをしたな、こんな弱小局に妹さん引き込んで、でも言っておくけど、オレの局は確かに弱小、継千帝家の足元にも及ばねーよ、だけどな」
「え、きゃっ……」
甘羅さんは甘羅さんの後ろで小さくなっていた私の腕を掴むと自分の前に引っ張り出して頭にがさつに手を置いた
「こいつは化ける、今後すげぇ功績を上げることになる、お前らなんて目じゃねえから」
私は唖然として甘羅さんの顔を覗き込むがそれはいつも適当言っている時のような顔ではなく真剣で、本当に私が何かをするのだと確信している顔だった
何故甘羅さんがそこまで私を買ってくれているのかはわからないが私のために啖呵を切ってくれたことが、その時はただ嬉しかったのだ