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3話 御霊陰陽局出陣

 出勤1日目

 何故か私は月さんの毛繕いをしていた

「月さん、痛くはないですか?」

 私はブラシで毛をすきながら聞く

「うむ、なかなかにうまいのぉ、弓麻は手付きが丁寧でよい、主人は雑だからの」

 そう言って月さんは甘羅さんのほうをじろりと睨む

 たいする甘羅さんは私が昨日来たときと同じでソファに突っ伏して寝ている

 私が今日出勤してからおそらく一度も動いていない

「あの、今日は仕事とかしないんですか? 事務するにしても何もまだ教えて貰ってないですし陰陽を教えてくれるって……」

「主人はいつもこんな調子じゃ、やる気が出ないと寝てばかり、事務仕事は後で我がやるから弓麻は気にしなくていいぞ」

 月さんは気持ち良さそうに大きく欠伸をしながら甘羅さんの変わりに答えてくれた

「ですがそれだと私いる意味が……そうだ月さんがやっている事務仕事私にも教えてくださいお手伝いします! 陰陽の力は弱いですがそういう作業は得意ですから」

 家で散々落ちこぼれだと言われていた私は家族を見返す為に自分に出来ることはなんだってしてそれを経験として取り込んできた

 だから事務に関しても邪魔にはならないはずだ

「お主……なんて出来た人間なんじゃ、主人! お主も全て我に頼らず弓麻を少しは見習わんか!!」

 月さんは私の膝から飛び降りると甘羅さんの背中に飛び乗ってバタバタと踏みつける

「あー、今日は平和だなー、オレの出る幕なんてないなぁー」

 だが甘羅さんは至ってやる気の無さそうな声で棒読みするだけ

 諦めたように月さんは甘羅さんの背中から飛び降りるとこちらへ戻ってきた

「主人は放っておいて弓麻や、仕事を教えてやろう、ついて参れ」

「は、はい!」


 それから少し日付が経って月さんに教えて貰った事務仕事もそれなりな覚えてきた頃のこと

「月さん、この資料はこっちでいいんですか?」

「ああ、それは陰陽局管轄に送る資料じゃから我がやろ一一」

「月ちゃん、弓麻、仕事行くぞ準備しろー」

 月さんの言葉を遮っていきなり立ち上がった甘羅さんがいつものトーンで言うと速攻で服を脱いで着替え出した

「甘……羅さん! いきなり脱がないでください!!」

「にゃっ!!」

 急に甘羅さんが喋り出したことよりもいきなり着替え出したことに動揺して叫ぶと慌てて月さんを顔の前で抱き締める

「別に見られて減るもんじゃないし、いいから準備しろって、お前が使うようの札とかはそっちにあるから」

 布擦れの音が止んでから月さん越しに甘羅さんを見ると棚を指差している

「お札ですか!? 私には使えませんよ!」

 私はあやかしこそ見えるもののお札を行使する程の力など持っていない

「それにはオレの霊力込めてあるから、まずはそれ使って身体に術を使うことを馴染ませる、俺は実践派なんでね」

 なるほど

 いきなりのことで驚いたが一応ちゃんと稽古をつけてくれる気はあったようで安心した

 最悪このまま事務仕事をする毎日が待っているのではなんて思っていたが

「のぉ弓麻よ、我も準備があるゆえそろそろ下ろしてはくれまいか?」

「あ! ごめんなさいっ」

 私は腕のなかでもぞもぞと困ったように動く月さんを慌てて下ろして自分も棚のなかに準備された装備を付けた

「んじゃ、御霊陰陽局、行きますか」

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