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第22話 身体検査と破砕機

 三ヶ月に一回、オレたちにはメンテナンスと呼ばれる身体検査がある。虚構世界へ入る時、現実と同じように動けるよう、設定を合わせておく必要があるのだ。

 特に体重は変動しやすい人もいるため、定期的なチェックが欠かせなかった。


 すべての検査を終えて更衣室へ戻ると、航太がオレの体をじっと見ながら言った。

「お前、本当に痩せてるよな。体重何キロだ?」

 細いとはよく言われるが、実質的に言うとオレの筋力は普通の地球人より少ない。無重力空間で育ったため、筋肉があまり発達しなかったのだ。

「五十キロ」

「うーん、二十八キロも差があるのか」

 と、航太はつぶやいてから着替えを始めた。

「これでも前よりは太った方なんだぜ」

「それにしても細い。時々、骨折させてしまわないかと心配になる」

「その心配はいらない。子どもの時からずっとサプリ飲んでっからな」

 筋トレも多少はしたものの、元々筋肉のつきにくい体質らしく、結果が出る前にやめてしまった。一方で骨密度は高く保てるよう、毎日サプリメントを摂取している。

「ところで、破砕はさい機の方は直してもらえたか?」

 航太がたずね、オレはシャツのボタンを留めながら言う。

「ああ、やっぱバグってたんで修正してもらった。次からはもう大丈夫だ」

「よかったな。武器が使いづらいと仕事に支障が出る」

「見た目的には刃こぼれしてただけだけどな」

 と、オレは少し笑った。

 破砕機は虚構世界で使用する道具、いわゆる武器の総称だ。オレが使用するのは大きな鎌で、その刃が一週間ほど前からバグっていた。先端が欠けて虚構の住人に与えるダメージが半減してしまったのだ。

「実は僕も少しだけ改良してもらった」

 ズボンに足を突っ込みながらたずねる。

「へぇ、どんな風に?」

「これまでより速度が出るようにしてもらったんだ。といっても、ほんのわずかだけどな」

 航太が使うのは長弓だ。逃げ回る住人や、遠くにいる住人を消すのに役に立つ。

「学生時代、弓道部だったんだっけ」

「ああ、そうだ。大会にも出たことがある」

 こうした得意を活かせるのが破砕機のいいところだ。ちなみにオレが大鎌を使っているのは、一気に刈り取れて楽だから。

「かっこいいよな、弓」

 何気なくオレが返すと、航太がにやりと笑った。

「僕のことをかっこいいと言ったのか?」

「ち、違っ……」

 思わず顔を赤くして言い返すオレだが、航太は顔を近づけてくる。

 すると、すぐ後ろを三柴さんが通り過ぎた。

「更衣室でいちゃつくのはやめてね」

 と、まるで誰かさんのように言いながら。

 オレたちははっとして、黙々と着替えに集中するのだった。

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