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宇宙育ちのヤンキー、スパダリに溺愛される
宇宙育ちのヤンキー、スパダリに溺愛される
晴坂しずか
BLファンタジーBL
2024年12月02日
公開日
3.2万字
連載中
価値のない物語を消去する「幕引き人」の田村楓はヤンキーでツンデレ。同じチームのエリートな天才イケメン・千葉航太に溺愛され、振り回される日々を送っている。交際してからも素直になれない田村にかまわず、千葉は意地悪をしながら可愛がる。誰にも分からないはずのアトラリスス語も、何故か千葉には理解されていて――!?
サクッと読める、笑えてキュンとするSFラブコメディ。
※タイトルの前に星印がついているものは千葉視点

「理不尽探偵とアカシックレコード」のスピンオフですが、本編を読んでなくてもお楽しみいただけます。
※田村は本編第1幕第17話、千葉は第18話から登場します。

第1話 まだ付き合ってない

 父親の仕事の都合で宇宙へ移住したのは十五年前、オレがまだ八歳の時だった。

 七年前には地球からの人類宇宙移住計画が決まり、スペースコロニーが造られた。

 間もなく発覚したのがアカシックレコードの問題だ。調査の結果、容量が限界を超えそうになっていることが判明した。

 急を要するこの問題に対して、人間たちは価値のない記録を消去することにした。そうして日本で組織されたのが終幕管理局であり、現場担当を「幕引き人」と呼んだ。

 オレはその「幕引き人」として働いているのだが。


 業務課六組のオフィスへ入ると、毎朝必ず、真っ先に笑顔を向けてくるやつがいる。

「おはよう、田村たむら

 身長百八十六センチ。適度にがっしりとして引き締まった無駄のない体。普段から眼鏡をかけており、常に冷静で物腰やわらか。アメリカの難関大学で天体物理学を学び、在学中にアカシックレコードの調査員として惑星インフィナムへ行った際、情報の解読に貢献。在学中、終幕管理局内で使用される装置やパソコンの一部設計にもたずさわる。院進を蹴って大学卒業後は終幕管理局へ入り、自ら希望して現場担当になった変わり者の天才。

 語れば語るほどすごいやつ、千葉航太ちばこうたである。ちなみに年は同じ二十三歳で同期だ。

 オレはむすっとしたまま彼から視線を外し、班長の土屋つちやさんへ向かって挨拶をした。

「おはようございます」

「ええ、おはよう。これ、今日の予定ね」

 と、彼女が差し出してきた電子メモパッドにさっと目を走らせ、オレは鞄をロッカーへ突っ込んでからデスクへ向かう。

「もっとおもしろいもん、ねぇんすか?」

「仕事があるだけマシだと思いなさい。それともまた魔物に囲まれたいの?」

 と、土屋さんに冷たい視線を投げられ、オレは苦い顔をする。それはつい先週のことだった。

 魔物がはびこるファンタジー世界を消去するため向かったのはいいが、あまりに魔物の数が多くて、あろうことかオレは捕まってしまったのだ。

「あの時の田村、最高に可愛かったな」

 と、千葉がするりと会話に入ってくる。

 オレはとっさに距離を取り、わざと嫌な顔をして見せた。

「ふざけんな」

 しかし千葉はにこにこと笑っているばかりだ。

「いつものお前も可愛いけど、触手に締め上げられて苦しそうにする姿には、本気で興奮したよ」

 ふざけんな。マジで何なんだ、こいつは。と思うのは脳だけで、オレはその後のことを思い出して顔を真っ赤にさせてしまう。

「やめなさい、千葉くん。田村くんがゆでダコみたいになってるわ」

「古い例えですね、土屋さん」

 くすくすと楽しそうに笑う千葉に、オレはそっと背を向ける。

 魔物の触手に捕まったオレを助けてくれたのは千葉だった。ガチで興奮していたらしく、現実世界へ戻ってからご褒美のキスを求められたのだ。

 同じ班に配属されてからというもの、毎日のように彼から迫られていたけれど、さすがにキスは……なんて戸惑っているうちにファーストキスが奪われて、オレは恥ずかしさのあまり固まってしまったのだ。

 ああくそ、思い出しただけでドキドキしやがる。まだ付き合ってねぇのにキスされて嬉しかったとは口が裂けても言えない。

 そんなオレを差し置いて、土屋さんと千葉はいつの間にか仕事の話を始めているのだった。


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