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第4話

 結局、想像と推測と希望的観測が交錯してしまい、

 「わかった」仲冨が言う「今度」やけに自信たっぷりに聞こえるが、もともとそういうしゃべりかただからなのだろう「ちゃんと」視線が泳いでいるよ、あっちこっち、たまに、こっち、「本人、連れてくるから」

 「それがいい」いや、よくない。本格的に参入することになってしまう。

 おれは、あくまでも相談役だろう?

 わかってる。女子の体は妊娠できるようになっている。男子は妊娠させられる。だがそこに不思議と理屈だけでは納得いかない領域があって、おそらくとてつもない快楽があるのだろう。求めあう恋人同士がからみあい、ねっとりとあえぐ姿を想像するのは容易だ。だが、あくまでも見知らぬ幻想の男女として。それが、よく知っている人となると話は別。

 「大丈夫かよ」おれは仲冨に聞くけれど、答を求めているわけではない「やばいんならヤバイって言えよ」そうじゃない本当は無理してでも『大丈夫、へーきへーき』と言って欲しいんだ「ちゃんと味方になってやるからさ」いやちがう、もう関わりたくないよ。むしろこのまま終わりにしてくれ。

 「うん」仲冨が視線を足元に落としながら言う「ありがと」

 いやいやいや、ちがうちがう、ちがう。そうじゃないだろ。

 いつものようにテメェ呼ばわりしてくれよ。

 なんだよ、そんな『ありがと』って。しかも、その声。

 わかってる。こいつは、めちゃくちゃカワイイ女。かつてはものすごくおとなしくて恥ずかしがりやで、言いたいことの1%も言えないような女の子だった。覚えているよ、つい昨日のことのように。そんな仲冨のことが好きだったけど、おそらく恋愛感情としてではなく、友情なのだろう。仲冨がガラリと雰囲気を変えてからも、それはそれで愛おしく思えた。苦しい時期に一緒になって乗り越えてきた仲間なんだ、おれは大切に思っている。だから、困っているなら助けたい。けど、あんまり関わりたくない。どうすればいいんだよ。

 「あ、うん。そう。そうそうそう」

 って、ぉぃ、いきなり誰と話してやがる。

 仲冨はおれの目の前でなんの許可もなく通話を始めていた。見逃した。まったくそんな気配わからなかった。おい、ちょっと待てよこらと言いたかったが、

 「うん、じゃ、うんうん、じゃそゆこと、でね?」

 と通話を終えたところだ。

 「あのさ」おれは問いかける「いちおう聞いてもいいかな」

 「なによ」仲冨は不機嫌そうだ。

 「いま、誰と話を?」

 「誰って、決まってるでしょ」仲冨は斜め上目遣いでおれを見る「せいちゃんよ」

 そうですか。

 「このあとはもう時間ちょっとも無理かな?」と丁寧に質問してくるので思わず、

 「いや。大丈夫だ?」と口走ってしまった。

 「ほんとに」

 「って、まさか」

 「せいちゃん、こっち来るって」

 「いまからかよ」

 仲冨は無言かつ無表情に、おおきく上下に首の運動をして見せた。

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