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第19話「白い部屋」4(一月二十三日~二十九日)――月波140字小説

月波 @tsukiandnami


「ちょっと待ってください。ケィさん今、交換って言いましたよね。てことはなんですか?ボクのオリジナルの世界線で、今まさにハルがボクを演じてるってこと?」

ケィさんが頷く。

「時間の流れはまったく同じってハルは言ってた。少なくとも計測可能な範囲では、こっちと向こうは同じ速さで流れてる」

―――――午後7:41 · 2023年1月23日



「過去二回では、少なくとも元世界のハルの不利益になることはしてないって言ってたよ」

まあ気休めだけど、とケィさんは繋いだ。

「ケィさん、今の日本時間ってわかります?」

「ちょっとまって。えっと、九時半かな、朝の」

ヤバい!もう期末試験がはじまってる。

「ボク、帰ってテスト受けなきゃ」

―――――午後7:00 · 2023年1月24日



「テストって何時まで?」

今日は四科目。午前中に三つ、午後にひとつ。今はたしか数学のはず。

「最後のが終わるのは午後二時過ぎです」

そっか。ケィさんは嘆息をつく。

「最後の奴の途中で帰ることになるかな。その科目は?」

「英語です。今日の科目は数Ⅱ、現国、世界史、それに英語の長文読解」

―――――午後7:00 · 2023年1月25日



「基本、試験は大丈夫だと思うよ。あの子本気で賢いから」

むしろ点取りすぎちゃうかもとケィさんは言ってるけど、現国なら負けない、とか張り合ってしまう。

「でも今回は試験かあ。ハル残念だったかもね。あの子、他所の世界線での体験をすっごく楽しみにしてるから」

前はどんなハルやったのかな?

―――――午後11:19 · 2023年1月26日



「最初に入れ替わったのはやっぱり高校生だった。なんか凄く貧乏でおまけに怖がりだったわ。両親が離婚してて嫌な男が出入りしてたらしいの。そのときは三日ほど滞在してたんだけど、ハルはその男を二度と来ないよう言い含めて追い出した、って言ってた。ちゃんと伝言は残したそうよ」

はあ?世直し?

―――――午後8:50 · 2023年1月27日



「二人目はピアニストを目指してるハルだったそうよ。入れ替わった先もウィーンだったって」

え。それって別世界線のボクですよね。ピアノ?ボク、そんなことできるの?

「テストじゃ無かったけどレッスンがあったって言ってた。天才ハルでも流石にピアノは難しかったみたい。なんとかしたらしいけど」

―――――午後11:11 · 2023年1月28日



「ケィさん、さっき『招待』って言いましたよね。この入れ替わりってハルが、この世界のハルが人為的に行ってるってことなんですか?」

「最初のは偶然の要素が強かったと思う。でも、その結果をイメージしてたのは間違いないわ。二人目は完全に確信犯。細かい制御はあなたの回も含めてまだだけどね」

―――――午後9:40 · 2023年1月29日

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