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第3話「白い部屋」1(一月一日~八日)――月波140字小説

月波 @tsukiandnami


目が覚めたら、白い部屋にいた。ふわふわしてて身体が上手く動かせないと思ったら、全身がなにかにくるまれてて拘束されている。もがいてみるけど、くるんでるもの自体が固定されてるっぽい。あと匂いが凄い。めちゃくちゃ汗臭いのと、それを消すための消臭スプレーが混じり合ったみたいな。どこここ?

―――――午後9:11 · 2023年1月1日



寝てるうちに捕まってどこかに連れ込まれたのか?お母さんとお父さんは?そもそも今日は期末試験があるのに。夢にしてはリアル過ぎるし、とにかく時間が知りたい。顔は動かせるので周りをみてみた。真白い天井にたくさん機械が埋め込まれ、付箋がいっぱい貼ってある。それと、浮かんでるでっかい蓑虫。

―――――午後6:54 · 2023年1月2日



あれは寝袋、だね。ボクは言葉を口に出してみる。大丈夫、喋れる。目の前の寝袋はついさっきまで人が入ってたみたい。ボクを拘束してるこれも、もしかして寝袋かも。にしても、なぜ天井に寝袋が?しかもこっち向きに。あれじゃ落ちてくるのが怖くて寝られやしない。とにかく早くここから出なくっちゃ。

―――――午後10:28 · 2023年1月3日



ごそごそしてたら内側のファスナーみたいなのに触れた。蓑虫が開き、外気が流れ込んでくる。最初はひんやりしたけど、慣れてみれば暑くも寒くも無いちょうどいい気温。上半身を寝袋から乗り出させながら内側を見下ろしてみる。身に着ているのはシンプルなスポーツブラと、下はショーパン。どっちも白。

―――――午後9:35 · 2023年1月4日



冷蔵庫がたてるみたいな低周波の音に警報音が重なった。超ビビる。と、部屋のどこかから声がした。

「おはようハル、起きたみたいね。着替えたらこっちに来て」

思わず周りを見回す。白い部屋には他は誰もいない。呼ばれたのはボク?確かにボクは春海だけど。とにかく、まずはここから抜け出さなくちゃ。

―――――午後9:52 · 2023年1月5日



やたら不安定でぐらぐらする寝袋を両手で押し出すようにして抜け出した。と思ったら、そのまま身体が飛び出した。え?何?どゆこと?たった今ボクが抜け出した蓑虫がどんどん遠ざかり、身体が真上に飛んでいく。ジャンプとは違う。押し出したときの勢いそのまま。考える間もなく頭が何かにぶつかった。

―――――午後9:49 · 2023年1月6日



後頭部に次いで背中を天井に打ちつける。痛……くない。クッションみたい。そう思う間もなく、バウンドした身体が下に落ちていく。や、落ちてるのとは違う。だってさっきより勢いが無い。抜け殻になった寝袋に向かってゆるゆると落ちながら、身体を捻って後ろを見た。白い壁に小さな丸窓。ここは宇宙?

―――――午後11:11 · 2023年1月7日



船内着らしきものに悪戦苦闘していると、奥の中央にあるマンホールみたいな扉が開いて白い服(同じ船内着?)を着た女の人が入ってきた。

「なにしてるのよ。時間かかり過ぎ」

壁を蹴ってボクに向かってぶつかってきた彼女はそのまま一緒に反対の壁まで漂い、何かに掴まって止まる。碧い瞳の綺麗な人。

―――――午後10:00 · 2023年1月8日

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