「お前の事を、推挙した」
あー!それで!と、童子が叫ぶ。
「
「だから、すまん!しかし、
「……先生が、私の事を?」
孔明は、驚きを隠せない。
「私はまだまだ、学ばなければならない事ばかり、とても、仕官など……」
「そうですわね、旦那様は、もっと、学ばなければ。劉備様の元で」
「黄夫人?」
「奥方?」
孔明も、徐庶も、首をひねる。
「だってねー、ずっと、庵に籠りっぱなし。実践ってもの、そう、まずは、仕えるって事を学ばないと……」
珍味でもある、
「でも、奥様!あの、二人がいますよ!旦那様に、よからぬ遊びを教えます!」
「あらっ、その時は、童子、お前のお父上の出番でしょ?」
「あっ!そうでした!」
と、童子は、胸を張る。
「なにやら、私が悪の道へ、進む想定なのですが、ならば、なおのこと、劉備様の元では……」
「いや!そこを、なんとかっ!諸葛亮よっ!」
徐庶が、再び頭を下げた。
なんでも、二度足を運んで、門前払いが、かなり堪えたようで、劉備は、日々、考え込み、関羽と張飛には、外出禁止令をだして、鍛練に励ませているのだとか。
「まあ、思えば、居候。本来の姿に戻ったまでだが、今の劉備様は、あの集まりの時の劉備様ではない。だから……と、言いたいが……」
うーんと、徐庶は、言い渋る。
「お
月英が言う。
あー、と、声を上げ、なんとも、言いがたいという顔をしつつ、徐庶は、頭をかいた。
「まあ、言ってしまえば、そうなのだが、しかし……」
劉備には、何か光るものがあると、徐庶は、言った。ただ、それは、まだ小さい光で、自分一人では、磨ききれないだろう。そして、たまに、暴走する、あの義兄弟とやらがいる。こちらは、自分の手には負えない。だからこそ、善き人材を集めなければならないのだと力説しつつ──。
「肝心の禄がなぁ。奥方が言おうとしている通りよ」
以前は、各土地の
共に、黄巾の乱を平定し、それなりに名前が通っていながら、劉備だけは、未だ、パッとせず。その焦りもあるのだろう。
漢王朝の末裔を名乗る劉備にとって、帝を擁護する曹操は、邪魔でしかない存在であり、そして、帝を擁護する曹操にとっては、自らが、正当な王朝の血脈を持つと豪語する劉備が、邪魔で仕方ない。
ある意味、因縁ある二人なのだが、結局、曹操にしてやられている現状に、劉備自身焦れている。
「……と、言う訳で、優れた人材確保と、なるのは、分かる。が、御自身は、どこかに国を持つ訳でもなく、役に付いておられる訳でもなく、曹操から、逃げ回っているような状況だ。人、どころか。その、人を雇う、禄は、どうする。という話よ」
徐庶は、結局、劉備が、世話になっている
「あらまあ、徐庶様、仕官された、といっても、結局、下働き以下のお立場、いえ、居候も居候、それでは、なかなか、ご意見も通らないでしょうに」
うん、まあな、だが、官僚やらの考え方は、垣間見れ、
孔明は、じっと、二人のやり取りに耳を傾けていたが、
「……劉備様は、時を読まれていない。曹操様に、かまってしまったが為に……、全て失ってしまった。巻き返し、も、できなくはないだろう……」
と、何か考え込んでいる。
「……それにしても、二度も、でしたか?黄夫人?」
孔明は、劉備が二度も訪ねて来たかと、記憶を探った。
「おお、それそれ、諸葛亮よ、お前が、こちらへ世話になろうと、やって来た時、行き違いで訪ねられたようでな、あの弟君が、追い返したのだとか」
えーーーー!!!あの均様がっ!!!
月英と、童子が、叫んだ。