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第3話 カラスカス帝国からの正式書簡

「王女達よ、全員、揃ったか」


 玉座に着くドゥセテラ国王陛下の前に並んだ四人の王女は、その声に、一斉に完璧なカーテシーで応えた。


 それぞれ、髪色と瞳の色、そしてドレスの色もさまざまな王女達が揃ったさまは、壮観だった。

 まるで、豪華な花束のような美しさである。


 そして玉座に座る国王の背後には、これまたそれぞれに華やかな三人の美女が控えている。

 国王の正妃と、二人の側妃達だった。


 部屋の両側には、壁に沿って、大臣達がずらりと並んでいる。


「第一王女フィリス・ノワール、第二王女トゥリパ、第三王女ロゼリー、第四王女ブルーベル。そなたらを呼んだのには、理由がある。実に、重要な、理由がな。そなた達、四人の王女は、我が国にとって、とても貴重な存在なのだ。それがなぜかわかるか、フィリス?」


 国王の問いに、第一王女フィリスは堂々と答えた。


「はい、国王陛下。我が国にとって、王女、とりわけ美しい王女の存在は、とても大切です。なぜなら、美しい王女を各国に送ることで、国同士の絆を結び、さらに、ドゥセテラ王家の血が入った子を産み、我が国の影響力を他国に広げることを歴史的にも外交戦略としているからです。ゆえに」


 そう言葉を切ると、フィリスは微笑みながら、国王を見上げた。


「美しい王女を数多く得るために、歴代の王達は複数の妻を娶り、より多くの王女を持つことに努めます」


「その通りだ、フィリス。さすが優秀な第一王女だけのことはある。では、この問題はどう解く?」


 国王は一枚の外交書簡を広げた。


「これは、東の大国カラスカス帝国から届いた、皇帝陛下からの正式書簡だ」


「……カラスカス帝国……? あの、大国の」


 謁見の間に、ざわめきが起こった。


「書簡にはこう記されている。『太陽の昇る国、偉大なるカラスカス帝国皇帝は、貴ドゥセテラ王国の名高き四王女から、一番の美姫を皇后として所望する』」


 今度のざわめきは大きかった。

 なんと、皇帝は一番美しい王女を娶りたい、そう言っている。

 つまり、四人の王女のうち、誰が一番美しいか、選ばなければならない———。


 ロゼリーがトゥリパを見た。

 トゥリパも堂々とロゼリーを睨みつける。


 そして、フィリスは、うつむいて床に視線を落としているブルーベルを見ていた。


 強い緊張感をはらんだ熱気が、国王の放った次の一言で、さらに激しくなった。


「私は第四王女ブルーベルを帝国へ嫁がせようと考えている」


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