そして待ちに待った当日。
天気は晴れ。学園祭が行われる凛然高校の最寄り駅に集合だ。
いつもよりも早く起きて、アイロンで髪の毛をまっすぐにし、スカートのしわに気を付ける。今ではありえないもち肌に「勿体ないな」と思いながらもファンデーションを塗る。活きの良いまつ毛をビューラーで更に上げて、色付きのリップを塗って鏡を見た。
周りに溢れているもの全てを味方にして、自分色にコーディネート。いつもの制服が何だか可愛いワンピースみたいに見える。
うん。いい感じ。
時間に余裕を持っていたはずなのに、気が付いたらいい時間になっている。急いで朝ごはんと歯磨きを済ませて、もう一度鏡の前に立っては新しい自分に出会う。
昔の自分と、今の自分。二つが掛け合わされたこの姿は、一体何者なのだろうか。鏡に問いかけてももちろん答えてはくれない。
だけど、この姿を見ることが出来たことは、今回のタイムスリップの大きな功績だということは胸を張って言える。
それからちょっとだけ見栄を張って潰したスクールバッグを肩にかけて、「行ってきます!」と大声で叫んで家を出た。
朝日を浴びて、走って、短いスカートがハタハタと太ももをざわつかせる。この高揚感も、ドキドキも、目の前の景色が輝いて見えることも。あの時の一歩のお陰で出会えたものたちなのだ。このあふれ出るかのような感情を、私はきっと他の高校生よりも深く感謝していることだろう。
息を整え電車に乗ると、ちょうどいいタイミングでみのりから連絡がきた。
『おは(*^▽^*)安定の1番乗り。みんなはよ来いし(´;ω;`)』
私は電車でクスクスと笑いながら
『おはよー('ω')ノごめん電車なう(笑)あと10分位着くわ(*´з`)』
と返す。
最初は懐かしいと思っていた新着問い合わせも、今ではもうすっかり慣れた。問い合わせをして沢山来ていると嬉しくなるが、中を開けるとプリクラのメルマガだったり迷惑メールだったりでガッカリすることもある。元の時代ではもうすっかり味わえなくなった感覚だ。
それから電車に揺られながら車内の人物を見ては「この人も学園祭に行くんだろうな」と予測をしているとあっという間に目的地に到着。
5分前に到着したのだが、先ほど連絡が来たみのり以外に、モモも着いていてどうやら私は3番目の様だ。
「お待たせ~。」
「おはー。」
「おはよー。人マジでヤバいんだけど。」
「あれ桜高の制服じゃね?」
「マジじゃん。てかさ、女子高って合コンとかやってるらしいよ。」
「ふーん。大人だね。」
大人な私がそう言うのも何だか滑稽。
しかし、合コン未経験の私にとっては、自分のしたことがないことをしている人というのは年齢に関係なく大人びて見える。
そんな話をしていると、少し遅れてのんちゃんが来る。
彼女はパンツが見えそうな程スカートを上げて、いつもよりも派手にデコったスクールバッグを肩にかけ、真っ直ぐにした前髪を大きなピンで止めている。この中で1番のギャルは間違いなく彼女。今回も気合の入り方が違う。
「ごめーん待ったー?」
「時間ピッタだから問題なし。」
「ピッタとか天才じゃん。」
「良いから早くいこ。お腹空いたわ。」
「OK~!」
そういって4人で腕を組んでは、お花で飾られた賑やかな門をくぐり、