ある日の昼下がり。
「暇ね・・・・・・」
誰もいない寮のロビーでひとりカフェラテをしばくルイーザ。
先の無許可でのエクソシスト派兵、およびそれによる負傷者が出た事件の責任を問われ、カルファーニアは無期限謹慎。そのカルファーニアの指示に従ったとしてダリエントとルイーザの二人にも、一ヶ月の謹慎処分が魔法省より直々に下された。
校長をはじめとした学院の教員陣は、処分の見直しおよび軽減を強く求めたが、大臣であるマルトンジェッリの意向が覆ることはなかった。
後からアンジェラに聞いた話によると、イノチェンテがあの場に現われたのは、どうやら放送部のエミリーが情報を垂れ流しにしていたからだという。その二人も学院側から一週間の謹慎処分を受けることとなった。エミリーはともかくイノチェンテに関しては、悪魔より受けた傷のおかげで一時生死の境を彷徨っていたので、あまり関係のない話ではあったが。
学院側からの温情で、学内の移動に関しての制限は無いことだけが唯一の救いだろうか。授業や学外での活動については参加を禁じられているものの、図書館での自習や、こうして寮のカフェで時間を潰すことくらいは許されていた。
アンジェラが戻ってくるまでは、あと三時間くらいはある。もう少しカフェでゆっくりしてから、売店に行って今日の夕食の材料を買いに行こう。はじめは新鮮な気分だった夕食の準備も、一週間ほど経った今ではすっかり飽きてしまっていた。アンジェラが作った方が美味しいということに気づいてしまったからであろうか。
「フランテ・ルイーザ。少し相席させてもらうぞ」
そんな他愛もないことに思いふけっていると、突然後ろから声をかけられた。授業まっただ中のこの時間に現われる人物など普段は戦闘術の授業を削減されたせいで暇しているカルローネくらいのものだが、この威圧的な低音は彼のものではない。
ルイーザにとって聞き覚えのある声。そして今の彼女にとっては聞きたくもないその声の主は・・・・・・
「ルチアーノ・・・・・・さん」
「おいおい。何もそんなに睨むことはないだろう。それではまるで、私が君に何かしたみたいではないか」
「・・・・・・」
突如として現われたルチアーノのことを睨みつけ、無言の返答とするルイーザ。しかし、ルチアーノはそんな非歓迎的な雰囲気など意にも介さず、ルイーザの向かい側の椅子にどっかりと腰を落とした。
「・・・・・・いったい何のつもりですか?」
依然としてルチアーノを睨みつけたまま、ぶしつけに尋ねるルイーザ。
「随分と嫌われたものだな。まあいい」
ルチアーノはそう呟きながら、ルイーザの目の前で堂々とタバコに火を着ける。
「先日、今後の学院の処遇について大臣と話し合ったのだが、せっかくだから君にも教えておいてやろうと思ってな。まあ、おそらくいい話だと思うから安心してくれ。少なくとも、君にとっては・・・・・・な」
口から煙を吐き出しながら、ルチアーノは不敵な笑みを浮かべた。