「さて。蒙昧な諸君らであっても、前大臣が殺害されたことくらいは知っているな?」
いちいち鼻につく人を見下した話し方で、マルトンジェッリは勝手にスピーチを始める。
「それも学院の卒業生によってだ。ワシは兼ねてより魔法省副大臣としての立場から学院の腐敗を案じてはいたが、まさかここまで腐りきっていたとは・・・・・・!」
ルチアーノの麻痺呪文によって床に這って抵抗の余地も無い生徒たちを見下して悦に入っているマルトンジェッリ。その様はまるで独演劇の主演俳優か、あるいは独裁国家の大統領の演説かのようだった。
「腐敗だと!? ふざけ・・・・・・」
「”
好き放題振る舞うマルトンジェッリへと噛みつこうとしたファリーニであったが、その言葉を最後まで言い終えることなくルチアーノにより無力化されてしまう。
「誰が貴様に発言を許可した? ふん。卒業生が犯罪に手を染めたのは、貴様らの教育方針が間違っていたからに他ならんだろう? まさか違うとでも言いたいのか?」
その様を横目で見ていたマルトンジェッリは彼女へと侮蔑の視線を向け、人を食ったような態度で告げる。
「貴様みたいな一塊の教師など、ワシの権限でいつでもクビを飛ばしてやってもいいのだがな。わかったらせいぜい発言と態度には気をつけることだ」
「ぐ・・・・・・」
鋭い視線にて無言の抵抗を示すファリーニではあるが、ルチアーノに睨みをつけられており、どうすることもできず唇を噛みしめていた。
ギギギ・・・・・・。
すると講堂の扉が開き、二つの人影が入ってくる。
「いつまでたっても会談の場所に現われないと思えば・・・・・・。いったい何の真似じゃ? マルトンジェッリよ」
現われた内の一人、校長のヴェルディがマルトンジェッリに睨みをつけ、その口を開く。
「ふん。
「もうすぐ無くなる」という部分に反応してか、一部の生徒たちが目を見開く。しかしそんなことは歯牙にもかけず、マルトンジェッリは人を食ったような挑発的な態度を崩さない。
「はて、大臣? 儂の目には、正式な辞令も出ないうちからオイタを働いている
「貴様・・・・・・!」
ルチアーノが怒りを露わにし、杖の先をヴェルディへと向ける。
「”
しかしヴェルディの傍らに立つもう一人の人物、カルローネが素早く放った妨害呪文によって、その行動は無力化されてしまった。講堂の端同士に立ち、にらみ合うルチアーノとカルローネ。
その様子を高みの見物をしていたマルトンジェッリはつまらなそうに鼻息を一つ鳴らすと、ルチアーノに杖を下げるよう合図を送った。
「まあちょうどいいだろう。ここで貴様にも伝えておいてやる」
マイクを手に取るマルトンジェッリ。
「ゾルチーム高等魔法学院は、3年後の9月を以て廃校。新入生の受け入れと、エクソシストの新規輩出も禁止。廃校後は軍の下部組織として併合する。以上、これはもう決定事項だ」
カルローネにより麻痺の解除が行なわれ、回復した生徒たちからはざわめきが起こり始める。しかしマルトンジェッリは興が冷めたとでも言わんばかりに、階段を降りてルチアーノの元へと歩いていく。
「帰るぞ、ルチアーノ」
「はい」
マルトンジェッリに横柄に呼びかけられ、ルチアーノは”
「すまない、身体の動く諸君は重傷者の救護を手伝ってくれ! フランテ君、悪いが救護のナターリ教授を! パペリー君は私が解呪しておく」
「は、はい! お願いします、カルローネ教授」
ルチアーノの麻痺呪文の被害を受けた生徒たちの救護を主導するカルローネの声が、大混乱に陥った大講堂中へと響き渡った。