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THE FAILURE(Ⅲ)

「まさか悪魔が魔法を使ってくるなんて・・・・・・」


 ルイーザが今まで相手したことのある悪魔は、いずれもその爪や牙などでの直接攻撃しかできないようなタイプである。眼前の骸骨のような見た目の悪魔みたいに、魔法で攻撃してくる者は初めてだ。


「僕も初めてだよ。さっきの魔法が僕たちの使うそれと同じだと仮定するならば、さっきのは”燃えよフエゴ”になるのかな?」


「光線の色や、アイツに着弾したときの黒煙からも、そう見て間違いなさそうですね」


 未知の敵に戸惑いながらも、冷静に分析を試みる二人。このあたりはこれまでの酷使とも言うべき場数の成せる業だ。


 相変わらず機械のように一定のペースを保ち、ゆっくりと歩いてくる悪魔。するとその眼窩がダリエントの方向を捉え、赤く揺らめく光を宿した。


「来ます!」


 いち早くその挙動を捉えたルイーザが叫ぶ。


「わかってる! 魔法ならこれで止められないかな? ”沈黙せよオブザーバル”!」


 ダリエントが沈黙呪文を唱えるが、眼窩の光が消える気配は無い。構わず光は強くなっていき、悪魔の顎が再度外れる。


「oGeUf」


 再度放たれる強烈な赤い光線。


「ダメか・・・・・・! ”反射せよリフリージア”!」


 ダリエント目掛けて放たれた光線は、またも白く光る六角形の盾に阻まれ、悪魔の方へと跳ね返される。着弾した光線はまたも黒煙を上げ、悪魔を衝撃によって後ろへ吹き飛ばす。悪魔は空中で体勢を立て直すと、後ずさりするように着地した。


「今のところ、これが一番有効な攻撃方法かな?」


 吹き飛ぶ悪魔の様子を観察し、ダリエントが呟く。


「そうですね・・・・・・。私の”轢き潰す炎獄の轍アルデント・アニーロ”もこんな森の中じゃ使えないですし・・・・・・」


 ルイーザ得意の、火車を喚び出して敵を轢き潰し、さらにその進路に残る炎の轍によって焼き尽くす強力な魔法”轢き潰す炎獄の轍アルデント・アニーロ”。しかし、いつものような人払いの済んでいる空き地でならともかく、こんな可燃性物質の宝庫とも言うべき森の中で使おうものなら、みるみるうちに大惨事だ。


「じゃあこうしよう。僕がアイツの気を引いて、攻撃をこちらに誘発する。それを反射魔法で弾き返すから、フランテ君はそのタイミングに合わせて援護射撃を頼む!」


「任せてください!」


 即席の作戦会議を終え、二人はそれぞれ悪魔の右と左の方向へとに別れる。


「”切り裂け”!」


 悪魔の右手側から、ダリエントが緑の光線を放つ。しかし、その光線は悪魔の青白い魔力の肌に阻まれ、消えてしまった。


「やっぱりあの防御壁をなんとかしないと攻撃は通らないか・・・・・・」


 悪魔はダリエントの方を敵と認定し、完全にその体を向けた。ルイーザはその八時の方角から、援護射撃に備えて杖を構える。


 すると、悪魔の眼窩に緑の光が宿る。


「今度は”切り裂けビエント”か? 来るよ、フランテ君!」


「わかりました!」


 それぞれダリエントが”反射せよリフリージア”、ルイーザが”焼き尽くせフエゴ”の準備をし、タイミングを計る。悪魔の眼窩の緑光が大きくなるにつれ、徐々にその全身の青白い魔力の光が薄まっていくのが、ルイーザの方向からは観察できた。


 今なら・・・・・・!


 ルイーザが構えから呪文を放とうとした、そのとき。


「”焼き尽くせフエゴ”!」


 ルイーザにとっては聞き覚えのある声。その呪文とともに、の方角から赤い光線が飛来し、隙だらけの悪魔の背中を捉え、火柱を立てた。

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