学院南の森の中にて。
ルイーザとダリエントの二人は、カルファーニアの言っていた学院に向かっているという悪魔の姿を探していた。うっそうとした視界の悪い森の中。互いが互いを見失わないような距離を保ちながらも、手分けして目標を捜索する。
「いたよ、こっちだ!」
するとダリエントが目標を見つけたらしく、ルイーザを手招きして呼び寄せる。
ダリエントの指差す先を見てみると、そこには今までに討伐してきた悪魔たちとは一線を画す異質な姿の
二足歩行になりかけの類人猿のような人型のシルエット。しかし、それには皮膚が無く、むき出しの骸骨のような姿をしている。肌の代わりだろうか。その身には青白く揺らめく魔力の層だけが
「なんだろう・・・・・・? あんな奴は今まで見たことないな・・・・・・」
ダリエントが顎に右手を当てて、そう呟いた。
「ダリエントさんもですか? 私もあんな不気味なのは初めてです。なんて言うんでしょう? 生物としての本能がまったく感じられないような・・・・・・」
ルイーザが今まで出会った悪魔たちは、どんな形であれ野生の獣のように本能を持っているように見えた。例えば興奮にしろ恐怖にしろ、そこからは何かしらの感情が感じ取れものだ。
しかし目の前の骸骨にはそれが感じられず、ただただ操られているだけかのような、何とも言えない不気味さがあった。顔も骨だけでその感情がまったく読めないからであろうか? それとも、二人の接近もまったく意に介せず、ただただ歩き続けているその姿故であろうか?
「とりあえず、いったん奴の気を引こう。このままでは僕たちを無視して森を抜けてしまいそうだ」
「任せてください。”
ルイーザは杖を取り出し、骸骨に向けて黄の光線を放つ。光線は骸骨へと着弾したが、青白い魔力の肌に阻まれて、ただその場で白い煙を上げるのみであった。
骸骨はそのままゆっくりと振り向き、その身体を光線の飛んで来た方向へと向ける。
「効いていないね・・・・・・。だが、こっちを敵として認識はしてくれたみたいだ」
ダリエントも杖を取り出し、身構える。
「動きはとても緩慢なようですが・・・・・・いったいどう出てくるのでしょうか・・・・・・?」
少し後ずさりすれば簡単に距離を取れるような、そんな緩慢な動きでルイーザの方へ
とはいえ、間合いにはまだ余裕がある。ここはもう一発仕掛けてみるべきか。
「”
そう考えたルイーザは、杖を突き出し、風魔法を唱える。杖先から放たれた緑色の光線は刃の形を成し、骸骨目掛け一直線に飛んでいく。
しかし、その刃が届く直前。骸骨の
「oGeUf」
何と言ったか判らないような謎の発声とともに、骸骨の顎がガクッと外れる。すると次の瞬間。その開いた顎の隙間から、赤く太い光線が発射された。それはルイーザの放った呪文を易々とかき消し、彼女目掛けて向かって行く。
避けられない・・・・・・。ルイーザは咄嗟に制服のローブで身を守ろうとする。それは、ローブの持つ魔力軽減効果で少しでもダメージを抑えようという、咄嗟の判断であった。来るべき衝撃に備え、屈んで目をつぶるルイーザ。
「”
しかし骸骨の放った光線は、すんでのところでダリエントの反射魔法によって阻まれる。白い六角形は盾のように赤い光線の一撃を受け止め、さらにそれをそっくりそのまま骸骨の元へと弾き返した。
ゴゥン。
着弾とともに骸骨の身体からは黒煙が上がり、衝撃により10メートル程度後方へ後ずさりさせられる。しかし、決定打とは程遠い様子で、衝撃で剥がれた青白い魔力の肌を纏い直すと、再びゆっくりと歩きだした。
「ふぅ。危なかったね・・・・・・」
「助かりました・・・・・・。ありがとうございます」
攻撃から護ってくれたダリエントに礼を言いつつ、体勢を立て直すルイーザ。
「大丈夫、援護なら任せておいて。・・・・・・それよりも、これは厄介なことになったねぇ」
対してダリエントは、頭をかいて溜息をこぼす。その目線の先には、再び二人の元へとにじり寄ろうとしている骸骨。
「・・・・・・まさか悪魔が魔法を使ってくるなんてね」