教室までやってきたカルファーニアに連れ出され、後を着いていくルイーザ。しかし、たどり着いた先は結局いつもの研究室であった。いつもといっても、学院はエクソシストの派兵権を剥奪されたため、ルイーザが入るのは久々ではあるが。
カルファーニアが相変わらず建て付けの悪い扉を開けると、中には先に待機していたダリエントの姿もあった。
「こうして集まるのも久しぶりだな」
ルイーザが中に入ると、扉を閉めながらカルファーニアが話を切り出す。
「まあ学院からのエクソシスト派兵が禁止されたとなれば、僕らはただの
両腕を広げて、肩を竦めるダリエント。しかし、すぐに真剣な表情へ戻って言った。
「で、そんな状況下にもかかわらず、どうして僕らはここに?」
ダリエントから鋭い視線を向けられ、カルファーニアは椅子へと座りながら答える。
「まあ。緊急事態というやつだ」
「緊急事態・・・・・・ですか?」
穏やかでないその言葉に、思わず息を呑むルイーザ。
「ああ。学院南部の森林地帯に悪魔の出現反応があるんだが、コイツが誰にも対処されずに放置されている。幸い森の中に出現したため現状被害者は出ていないのだが・・・・・・」
ここまで話すと、カルファーニアの顔がまた一層険しくなる。
「コイツは真っ直ぐ学院へと向かっている」
「え?」
「学院に?」
カルファーニアの言葉に驚きを隠せないルイーザとダリエント。
「ああ。本来ならセイリオスの連中が来て討伐してくれるのを待つしかないのだが・・・・・・アイツらが学院のために動くとは到底考えられなくてな」
「確かに・・・・・・」
カルファーニアの言う通り、先の集会を始めとしたルチアーノの言動から鑑みても、彼の組織するセイリオスが学院に協力してくれる可能性は限りなく低いだろう。ルイーザとダリエントも思わず顔を見合わせることしかできなかった。
「もしそれで手をこまねいている間に生徒が襲われでもしようものなら、学院としての大問題だ。そこで君たちには、学園南部の森でコイツの迎撃を頼みたい」
「
普段指示される
「悪魔は通常、魔力の低い人間を襲うために村や町に現われる傾向にあるが・・・・・・今回のコイツが真っ直ぐ学院へと向かっている」
しかし、カルファーニアは彼女に構わず話の続きを始めた。
「つまり、強力な個体である可能性が高い・・・・・・と?」
ダリエントが教授の言葉をつなぐように返す。
「ああ。力の弱い通常の悪魔は、魔力の乏しい一般市民しか積極的には狙わない。だが、稀に現われるより上位の個体は逆に、魔力の高い魔法使いを積極的に狙う傾向がある」
「わざわざ学院を狙うということは、その可能性が高いってことですね・・・・・・」
「ああ、そうだ。フランテ君」
やっと腑に落ちたようなルイーザの様子を確認すると、カルファーニアは一呼吸置き、最後に二人へこう告げた。
「腕利きの君たちにだからこそ今回の任務を頼んだが、くれぐれも無理だけは禁物だ。危なくなったら撤退もしくは時間稼ぎを最優先してくれ。では・・・・・・健闘を祈る」
ルイーザは湧き上がるような緊張感を落ち着かせるため、纏っているローブの布地を、そこについている銀の斜め十字ごと、ぎゅっと握りしめて深呼吸をする。
「大丈夫かい? じゃあ、行こうか」
すると、その様子を案じたダリエントによりそっと肩を叩かれ、二人は指定の座標へと向かうのであった。