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IN THE DARKNESS

「お疲れさん。向かうところ敵なしだな」


 今日も今日とて小型悪魔の掃討任務があり、それから帰還したルイーザ。研究室に戻ると、死んだ魚のような目をしたカルファーニアからぶっきらぼうな賛辞を受けた。


「ありがとうございます」


 初めのうちこそぎこちない様子もあったルイーザであったが、今ではもうすっかり慣れたものだ。欠伸を噛み殺しながら、カルファーニアへと返事をしている。


「ああ、今日はもう帰っていいぞ」


 教授によっては「なんだその態度は」と怒りそうなルイーザの態度ではあるが、カルファーニアはまるで気にもしていない様子だ。というよりは、もっと他のことに対して気が気でないと言った方が近いかもしれないが。


 それもそのはず。ただいまの時刻は午前2時。


 今回の悪魔が現われたのは深夜0時。それに叩き起こされる形で、カルファーニア及びルイーザとダリエントは眠い目を擦りながら任務に臨んだところであった。


 既にダリエントは回収した呪骸だけを置いて、足早に寮へと帰ってしまった後だ。対するカルファーニアは、既に薄いマットレス一枚だけを研究室の床に敷き、そのまま寝ようとしている。そんな彼らに倣うよう、ルイーザも一秒でも長い睡眠時間の確保のため、"転移ラスフィール"で自室へと戻るのであった。


 ***


「ggggggg」


 光無き闇の中、何者かの呻き声が響く。


「目覚めたか。”マドーレ”よ」


 それに語りかけるは、男抑揚の無い声。


「gggggrrrrrr」


 呻き声からはお世辞にも知性は感じられない。男と意思疎通が取れているのかも分からない。


「随分と腹を空かしているようだな。40年近くも眠っていたんだ、無理もないか」


 男の爪先からは暗翡翠色の球体が浮かび上がり、その血色の無い肌がにわかに浮かび上がる。彼はその虹彩の開ききった瞳でもって、その球体を覗き込むように眺めていた。


「どれ。贄でも獲りに行ってやるとするか」


 球体からは光が消され、男の姿が再度闇へと包まれる。その間際、一瞬だけ見えた男の背中には・・・・・・黒く大きな蝙蝠のような翼が拡げられていた。

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