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SURVEILING DEVILS

「さっきのカルローネ先生怖かったねー」


 基本戦闘術の授業が終わり、廊下を歩くルイーザとアンジェラ。ルイーザの心配に反しアンジェラは実にケロッとした様子で、さっきの授業中のことを気にしている素振りは無い。ルイーザは内心安堵し、胸を撫で下ろす。


 すると、そんな彼女たちの元に近づいてくる人影が一つ。


「フランテさん。カルファーニア教授がお呼びです。研究室までお願いします」


 そう声をかけにきたのは先ほどの授業でも一緒であった女子生徒アルファード・スザンナだった。


 カルファーニア・コルラード。スザンナが所属するスパーダ寮の寮長にして、悪魔研究の第一人者だ。学内における悪魔祓いの派遣に関する指令役も務めている。


「さっそく初任務かな? すごいねルー」


「私も先程の授業中に教授から『伝令メンサヘイロー』でフランテさんを呼ぶようにと言われただけですので詳しいことは存じませんが。おそらくはそういうことかと。どうせならあなたに直接送ればいい話だと思うのですが」


「カルファーニア教授はなんて言われるくらいだしねー」


 高揚と不安が入り混じり、頷くだけの反応になってしまうルイーザに代わり、アンジェラがスザンナと他愛のないやり取りをしてくれている。


「まあ、そういうことですので。私はこれで失礼します」


「ありがとね、スージー。また教室でー」


 要件を済ませ、去って行くスザンナ。アンジェラがそんな彼女に向けて大きく手を振ると、スザンナもわずかにはにかんで小さく手を振り返した。


「もう初任務かー。いいなー。私も行ってみたいなー」


「危険だから資格のない人を連れて行くわけにはいかないのよ。アンジーには次の薬学の授業の板書頼むわね」


「わかってるよー。あ、でも戦闘術の後だから寝ちゃうかも。そしたらゴメンね、ルー」


 そんな話をしながら廊下を進み、途中でアンジェラと別れ、ルイーザはカルフォーニアの研究室へと向かった。


 ***


「失礼します」


 建て付けが悪くて軋む扉をこじ開け、カルファーニアの研究室へと入るルイーザ。


「ずいぶん遅かったじゃあないか。


 出迎えたのは、魔法使いの黒ローブの上から科学者の白衣を羽織るという極めていびつな服装をした長身の痩せ男。髪はボサボサで無精ひげも生やしている。


「先程この『魔検知の陣デ・テクシオン』に反応があってね。東2番街のA地区にの出現兆候が出ているんだ。反応の大きさから推測するに、小型のが2か3体くらいだろう。まあ言ってしまえばただの雑魚だ。ルーキーのデビュー戦にはおあつらえ向きかと思ったんだが、どうかね」


 カルファーニアが指さした先には、魔方陣とパソコンのモニターが一面に混在する異様な光景が広がっていた。そのうち一つの魔方陣が赤く反応を示しており、中央のモニターには悪魔のものらしきシルエットが表示されている。


「ぜひ、行かせてください」


 両の拳を無意識に強く握りしめながらも、まっすぐカルファーニアを見据え、はっきりとした返事をするルイーザ。


「いい返事だ。一応ダリエント君にバディ役を頼んでおいたから、スパーダ寮棟のロビーで落ち合うといい。私としては、この程度の悪魔にやられるような奴なら別に野垂れ死んでくれていっこうに構わないのだが。キミのところの寮長なんかがやかましいだろうからね」


「は、はぁ。ありがとうございます」


 物騒な発言を平然とする教授に対し、若干引きながらも頭を下げるルイーザ。


「まあゴキブリ駆除に火炎放射器を持ち込むような過剰戦力だ。ピクニックにでも行くつもりで気楽に行ってきたまえよ」


 それだけ言うと、ルイーザに背を向けモニターの監視に戻るカルファーニア。そんな彼を尻目にルイーザは研究室を退室し、スパーダ寮棟のロビーへと向かった。

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