昨日の任命式のどこか浮ついたような雰囲気から一転。校内は何ら変わりのない穏やか日常に戻ろうとしていた。
レアンドロが
「昨日はおめでとう、ルー! って、どうしたの? 難しい顔しちゃって?」
いきなり後ろからかけられたその声に、ルイーザはふと我に返る。ウェーブロングの綺麗なブロンドの髪に、吸い込まれそうになりそうなくらいに済んだアクアマリンの瞳。その声の主はルイーザのルームメイト、パペリーノ・アンジェラだった。
「ありがとう、アンジー。って、私そんな顔してた……?」
「うん、してた。こーんな顔」
彼女はその垂れ目気味な目尻を両の人差し指で無理矢理吊り上げ、わざとらしいしかめっ面をしてみせた。そんないまいち変顔になりきれていない美少女のそれを見て、ルイーザからは思わずクスッと自然な笑みがこぼれた。
「なにその顔? 私絶対にしてないから」
「えー。そっくりだと思うんだけどなぁ」
いささか不満そうにぷーっと頬を膨らませるアンジェラ。
「はいはい。早くしないと次の授業遅れちゃうわよ? 遅刻なんてしようもんなら、フォルティナート教授に『パジャマパーティは楽しかったかい?』なーんてイジられちゃうに決まってるわ」
「言いそう、言いそう」
そんな他愛の無い話をしながらも、彼女たちはフォルティナートの待つ第二講義室へと駆け足で向かっていった。