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SHE HAD BEEN CELEBRATED

「ルイーザ君、就任おめでとう。いやはや、レアンドロの娘がもう悪魔祓いの任に就くことになるとは。月日が経つのは早いものだな」


「光栄です。カルローネ教授」


 任命式が終わると、基礎戦闘術担当の教授カルローネ・フォルティナートが拍手と共に歩み寄ってきた。ルイーザの父フランテ・レアンドロの同級生である彼は今年で52歳になるはずだが、見た目や雰囲気は非常に若々しく、言われなければとても年齢がそうだとは分からない。レアンドロとは旧知の仲であり、ルイーザの所属寮であるトルチャ寮の寮長も務めていることから、彼はルイーザのこともよく気にかけてくれている。


「彼は優秀な悪魔祓いだったからね。あの事件以来引退してしまったのは本当に残念だが、その娘とこうして同胞になれるとはね。長生きはしてみるものだ」


 そうしみじみと語るフォルティナート。


 フランテ・レアンドロ。当時学生にして、強大な悪魔、を討ち倒し、と呼ばれるその力の結晶が変形した杖、の力の使役に成功した伝説の悪魔祓いだ。その力で以て、その後も大小様々な悪魔と戦い、その悉くを討ち果たしてきたが、10年前、左手を悪魔に喰われてしまったことを機に、車輪の杖をルイーザに託し、引退してしまった。自分のせいで父親の腕が喰われるのを間近で見ることになったあの日の記憶が、ルイーザの表情を俄に曇らせる。


「お主で長生きなら儂はなんじゃ? か?」


 ルイーザと教授の会話を聞いていたのだろう。すれ違いざまに校長ヴェルディ・サテリーノが横槍を入れてきた。齢100にして、未だ現役の悪魔祓いでもある大魔法使いだ。


「おやおや、ヴェルディ校長。これは失敬。しかしながら、では既に死んでいますし、そこはあたりの方がいいのではないですかな?」


 悪びれもせずにおどけて言ってみせるフォルティナート。


「ゾンビでもどのみち死んどるではないか。そんなに儂に死んでほしいのか?」


「言い出しっぺは校長ではありませんか」


「さて、そうじゃったかな? 最近歳で物忘れが酷くてのう。よう覚えとらんわい」


 しばらくたわいのない話を続けたのち、校長は転移ラスフィールの呪文を用いて去っていってしまった。


「まったく。相変わらず掴み所のない御仁だ」


「カルローネ教授も大概だと私は思いますよ」


「ははは、手厳しいね。ルイーザ君は。少し浮かない表情だったから心配だったけど、その様子なら大丈夫そうだね」


 見透かされていた気恥ずかしさからか、目を逸らすルイーザ。そんな彼女の様子を見てフォルティナートは目を細める。


「おっと。悪魔祓いに就任したとはいえ、授業はちゃんと受けてもらうからね。ルームメイトと夜な夜なパーティして、明日の私の授業で居眠りとかは勘弁してくれよ」


 最後にこう軽口を叩き、フォルティナートは転移ラスフィールを唱え、去っていった。


 そんな彼を見送ると、緊張の糸が解けたルイーザの肩に、一気に疲労がのしかかってきた。彼女も後を追うように、懐からその車輪の杖を取り出し、転移ラスフィールを使い、寮の自室へと戻ることにした。

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