遥か太古、先カンブリア時代の海。
そこは、まだ目覚めを知らぬ世界でした。
クラゲのような原始的な生物たちが、静かに漂っています。
植物プランクトンが豊かなこの海で、彼らは生きていました。
未来を照らす光の訪れを待ちながら。
そこへ、ある時、運命の歯車が回り始めます。
生物史上に残る、壮大な事件の序章として。
一匹のクラゲ型原始生物の生殖細胞に、植物プランクトンが迷い込みました。
そして、そのDNAが、静かに、しかし確実に、原始生物のDNAに混ざり合っていったのです。
植物プランクトンが持っていたロドプシンという遺伝子。
光を感じる、不思議な力を持つ遺伝子。
それらが、原始生物のDNAと結びついた時、奇跡が起こります。
動物が、植物の光センサーの遺伝子を取り込んだのです。
原始的な目が誕生した瞬間です。
それは動物が脳内に光受容細胞を獲得した、歴史的な瞬間でした。
光を感じる細胞は、やがて脳内でまとまり、松果体へと進化していきます。
そして、脳の外に飛び出したものは、眼として、新たな世界を切り開くことになっていくのです。
クラゲのような姿だった目を持つ動物は、
三葉虫、昆虫、魚…
短期間の間に、多様な姿へと進化を遂げていきました。
カンブリア大爆発。
生命の多様性が、爆発的に広がった時代。
その幕開けは、光と共に始まったのです。
しかし、生き物が奇跡的に手に入れた光の獲得には、実は大きな代償も背負わなくてはなりません。
視界という3次元のフィールドで、生き残りをかけた競争が始まったのです。
骨格、目、脳…
生き物たちは、それぞれの武器を手に、進化の道を歩みます。
光は、希望の光であると同時に、
生存競争の始まりを告げる光でもあったのです。
それでも、彼らは生き抜いていきます。
光を道しるべに、
それぞれの世界で、
それぞれの物語を紡ぎながら。
生命の黎明。
光を求めて、
進化し続ける生き物たち。
そのドラマは、今もなお、
そしてこれからも続いていきます。