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第68話 新時代への階段②ー2

遥か太古、先カンブリア時代の海。

そこは、まだ目覚めを知らぬ世界でした。

クラゲのような原始的な生物たちが、静かに漂っています。

植物プランクトンが豊かなこの海で、彼らは生きていました。

未来を照らす光の訪れを待ちながら。


そこへ、ある時、運命の歯車が回り始めます。

生物史上に残る、壮大な事件の序章として。


一匹のクラゲ型原始生物の生殖細胞に、植物プランクトンが迷い込みました。

そして、そのDNAが、静かに、しかし確実に、原始生物のDNAに混ざり合っていったのです。


植物プランクトンが持っていたロドプシンという遺伝子。


光を感じる、不思議な力を持つ遺伝子。


それらが、原始生物のDNAと結びついた時、奇跡が起こります。


動物が、植物の光センサーの遺伝子を取り込んだのです。


原始的な目が誕生した瞬間です。


それは動物が脳内に光受容細胞を獲得した、歴史的な瞬間でした。


光を感じる細胞は、やがて脳内でまとまり、松果体へと進化していきます。


そして、脳の外に飛び出したものは、眼として、新たな世界を切り開くことになっていくのです。


クラゲのような姿だった目を持つ動物は、

三葉虫、昆虫、魚…

短期間の間に、多様な姿へと進化を遂げていきました。


カンブリア大爆発。

生命の多様性が、爆発的に広がった時代。

その幕開けは、光と共に始まったのです。


しかし、生き物が奇跡的に手に入れた光の獲得には、実は大きな代償も背負わなくてはなりません。


視界という3次元のフィールドで、生き残りをかけた競争が始まったのです。


骨格、目、脳…

生き物たちは、それぞれの武器を手に、進化の道を歩みます。


光は、希望の光であると同時に、

生存競争の始まりを告げる光でもあったのです。


それでも、彼らは生き抜いていきます。


光を道しるべに、

それぞれの世界で、

それぞれの物語を紡ぎながら。

生命の黎明。

光を求めて、

進化し続ける生き物たち。

そのドラマは、今もなお、

そしてこれからも続いていきます。


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