「え・・・?」
突然の頬への衝撃を受け、デルタは反対の手でその頬を押さえた。
強い衝撃と同時に、デルタの口と鼻は赤い血で染めらた。しかし、激しく殴られたはずなのに、殴られた痛みは……感じない。
「ちょ、ちょ、ちょ、ちょっとー!? カムっちー??? デルタになんて酷いことすんのさー??? 早くデルタに謝れー!!」
「ったく、気に入らねー!」
殴った当事者は下を向きそう吐き捨てる。
「この人誰?」
「デルタは知らないよね? この人がさっき言ったデルタに会わせて欲しいって言ってた人、カムっちだよ」
「カムっち……さん?」
「ああ、そーだよ! あんたがデルタって奴か?」
「そうだけど、何?」
「私はあんたのそういうとこ、気に入らねー! なんか、無性にムカつくんだけど」
「え!?」
「テメェさぁー、せっかくナブラって子やラプラシアンって友達がテメーに大切なことを必死で教えてくれたのに、そこから何にも学んでなくね?」
「え? あたしが学んでない?」
「そうだよ!! 今テメーが言ってることってな、ナブラって弟の為にとか言って、ナブラとラプラシアンの二人に内緒で、勝手に自分人生投げ出した時と一緒じゃねーか!!」
「だって……、あたしは弟のナブラが本当に大切だから! あたしが身代わりになって絶対に失いたくなかったから!」
「だから、それが偽善だって言ってんだろーが!! そうやってテメーは八方美人演じてるだけじゃねーか? 結局のところいーカッコしたいだけじゃねーか?」
◇そんなことないわよ!!!◇
デルタは刺すような目つきで蓮姫に迫ると、
怒鳴るように強く言いかえした。
「んなことあるっ!!」
そんなデルタの気迫に負けじと言い返す蓮姫。
「あんたにあたしの何がわかるのよっ!!
大切な人を見殺しにしてしまったあたしの気持ちわかる?
あたし達三人を創り出してくれたパパに手をかけて殺してしまった娘のあたしの気持ちがわかる? それを、あんたはあたしのこと何にも知らないくせに、
あたしに知ったような口聞くなー!!」
「感情に任せて論点を逸らすんじゃねーよ! だからさ〜、私が言ってるのはな、気に入らなのはなー、テメーが死ぬことで、そんなテメーでも大切に想ってくれてる奴らの気持ちをなんで粗末にするのかって事だよ!!
不条理に死んじまったけど、それでもテメーを大切に想ってくれて、お前には生きて幸せになって欲しいと願ってくれてる弟や友達の気持ちを、テメーはどうして受け止めてやんねーんだよ!」