「ねえ、デルタくん? 君たち三人は本当に邪魔なんだよ。ナブラ君も余計なことしてくれちゃって。
ナブラ君?本当に彼も馬鹿だよねぇ〜。
デルタ君を注射から庇おうと、カッコつけたりするから、代わりに病気になって、こんなことになるんだ」
「クソッ……」
「あれ、デルタさんどうしたの? 急にうつむいちゃって。あっそっか! あんな馬鹿なナブラ君でも、一応君の弟だったよね。ごめんごめん。心配しなさんな。君を先に殺さない。君には、ナブラ君が先に苦しみながらゆっくり死んで行くところを最期まで見届けさせてあげるから」
「き、き、き、貴様ー!!」
「ちょっとデルタちゃん待っ」
『グサッッー!!』
デルタの荒れた呼吸がようやく落ち着くと、
彼女は目の前の惨状をまるで魂が抜けたかのように無心でたた呆然と見つめている。
ついさっきまで存在していた人間の黒々として緋いシャワーを浴びていた。
***
「ねえ、ラプラシアン? ここは……どこ?」
「気がついたか、ナブラ?」
意識を取り戻したナブラの顔を、ラプラシアンが心配そうに見つめていた。
「どこだろう? ボクにもここが何処かはわからない。だけど、生き物の体の中じゃないかな?」
「どうして?」
『ドクン、ドクン!』
「心臓の鼓動が聞こえるんだ」
「そうよ。ここはあたしの体の中よ」
「お姉ちゃん!!」
「デルタさん!!」
「無事だったんですね!」
「あなた達2人を吸収したからね。あたしは無事よ。だけど、あなた達2人の精神は今はまだ独立しているけど、消えちゃうのも時間の問題なの」
デルタの体内で三人は話し続ける。
「ねえ、ナブラ教えて? どうしてあたしは大切な人達の命を奪うのかな!?」
その質問に、ナブラはただ無言でデルタの顔をみて涙を流す。
「ねえ、ラプラシアン教えて? どうしてあたしはみんなを幸せにしたいって思うのに、不幸にしちゃうのかな?」
その質問に、ラプラシアンはただただ無言でデルタの瞳の奥を見つめる。
「あたしに生きる資格、無いよね? これ以上長く生きてても、みんなを不幸にしちゃうだけだし」
デルタの心は泣いていた。
「お姉ちゃんの馬鹿ー!!!!!」
ナブラは渾身の力を込めて姉のデルタを一喝した。
「ナブラ?」
「生きる資格が無いわけ無いよ! お姉ちゃんは生きていいんだよー!!」
「だって……あたしは、この血に染まった醜い手はあなた達二人のことを博士に馬鹿にされて、怒りの感情のままに殺しちゃったのよ」
「デルタさん! ナブラ君の言う通りです。
デルタさんはボクとナブラ君に今までも幸せを沢山くれました。そして、これからもボク達に幸せを沢山ください。
その為にも、デルタさんは幸せになっていいんです!」
「ねえ? あたしは人殺しの犯罪者なのよ。この手を赤い血で染めた人殺しのこんなわたしなかんが、のうのうと生きろと、幸せになれと、
あなたはそう言いたいの?」
「そうだよよ!お姉ちゃんは確かに博士の命を奪ったのかもしれない。だけど当然じゃないか」
「え?」
「僕は」
「ボクも」
「僕たち2人は、お姉ちゃんの気持ちを他の誰よりも理解しているからね。
確かに側からみたら怒りに任せた残虐な人殺しかもしれないよ。お姉ちゃんが博士を自分の手で殺害してしまったこと、それはどんな理由であれ絶対に許されることじゃないよ。
お姉ちゃんが一生かけて償っていかないといけないことだよ。だけどね、お姉ちゃんはそこまでして僕達二人の為に悲しんでくれたんだ。そして博士に怒ってくれたんだ。だから僕達は、世界中の正義を敵に回してでも、お姉ちゃんの味方だよ!」
「ナブラ……ありがとう。
くうぅ、こんな情け無い姉でごめんね」