「博士……?」
デルタとナブラの2人は、お互いの負傷を庇いながら博士にそう声をかけた。
「う、う、うわぁぁぁー!!!!」
デルタとナブラに声をかけられ、事態を把握した博士は、天井に向かって声が枯れて出なくなるまで本当狂うようにそう叫び続けた。
それからだった。優しかった博士の性格は別人のように変わってしまった。
デルタ・ナブラ・ラプラシアンの三人は能力の発現を抑え込む監視カメラ付きの特殊な実験ルームに固く施錠され閉じ込められた。
「お前らも気の毒だな。人間に危害を及ぼす危険生物ということにされ、麻酔と猛毒を注射し、安楽死させる決定がくだされたんだからな」
そう三人に告げたのは最低限の粗末な食事を運んで来ていた監視係の研究員だった。
「ねえ、ナブラ?」
「なに、ラプラシアン?」
「ボク達はこのままここにいても殺されちゃうだろ?だから、殺される前に、デルタさんと三人でここ逃げ出さないか?」
「そうだね。ねえ、お姉ちゃんも脱走に賛成だよね?」
「……」
「ナブラ?」
ラプラシアンは無言で首を横に振ると、ナブラにそう告げた。
「お姉ちゃん……」
ナブラはまるで廃人のように心を失った姉デルタの顔色を伺い、心配をする。
デルタは博士の家族の命を奪ったあの不幸な事件以来ずっと塞ぎ込み、そして精神がおかしくなっていった。
しかし、三人の死刑執行は急遽思わぬ形で前倒しされ、直ぐに執行されることになった。三人が脱出を計画していたことが外部に漏れ、博士の耳に入ったのだ。
当初予定されていた全身麻酔の投与は無くなり、
直接猛毒を注射されることになった。
注射をされる順番はデルタが最初になった。
デルタに今まさに猛毒が注射されようとしていた。
しかし、デルタは全く怯えない。
デルタの表情は相変わらずで、ずっと下を向き、目は死んでいた。
「止めろー!!」
デルタの首に注射の針が突きつけられたその時だった。
ナブラはデルタの前に割って入り、デルタの注射を代わりに受けた。
「うわぁぁぁぁー!!」
ナブラは猛毒の激痛に耐えきれず、思わず悲痛な叫び声をあげた。
「ちょっとナブラ!?」
流石のデルタも、この時ばかりは目を丸くし、
ナブラの身を心配した。