目の前の煙突から、不気味な声が響いた。
「ふふ、よく来ましたね。
遠いところをはるばる……」
蓮姫は鋭い目で煙突を睨みつけた。
「マザー。あんた、私らをナメてるのか?」
「そんなことはないですよ。ただ、あなたたちの勇気に感心しているだけです」
「はあ? まあいい。あんたが、じじいが言ってた時の主だな?」
「その通りです。私はこの時代の時の主です」
「じゃあ、話は早い。私を先の時代に送ってくれ!」
「もちろん、そのつもりです。
ですが、その代わりにあなたに一つお願いしたいことがあるんです」
「お願い? なんだ?」
「まずはアマザとハムザを探し出し、この世界に命を吹き込む"命の蛇口"を開け、二人をここに呼び寄せていただきたいのです」
「アマザとハムザ? どこかで聞いた名前だな」
「昔話に出てくる人だよ」
オイロスは言った。
「そいつらは今どこにいるんだ?」
「アマザは今、あなたたちがよく知っている人物に乗り移っています。そしてハムザの居場所については、そのアマザが知っています」
「おばあちゃんの事だよ、きっと」
オイロスは蓮姫の耳元でそう呟いた。
「そう、おばさんです。オイロスよくわかりましたね」
「エヘヘ♪」
「ガキの癖して照れてんじゃねえ」
「で、私達はこれからどうすれば良いのだ?」
「ハムザの居場所は、アマザに直接聞いてください」
「内容はわかった。じゃあ、さっそくふたりを連れてくる!」
「待ってください。あなたに渡すものがあります」
マザーは、煙突から小さな透明な球を出す。
それはまるでクラゲのように光を放っていた。
「これは電心球です」
「電心球?」
「この玉を相手に投げると、テレパシーで会話ができます。アマザとハムザが作った時を旅する魔法の玉です」
「それは例えば、前世まで遡って会話もできたりするのか?」
「はい。この玉には、電子と陽電子が入っていまして……」
蓮姫は、マザーの説明を聞いて首をかしげた。
「なるほど。さっぱりわからん」
「やはりそうですか。あなたの生まれた時代の言葉にはありませんから無理はありません」
「とにかく、私がこれからやるべきことを手短に教えてくれ」
「わかりました。まずはこの玉を拾ってみてください」
するとオイロスが軽々と玉を拾った。
「こうですか?」
「そうです。君は、なぜこの玉を拾うことができたと思いますか?」
「わかりません」
「君は、アマザとハムザの子孫だからです」
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↑【登場人物】
•
•オイロス
•マザー様