遥か昔、この世界はまだ生命の息吹を感じていませんでした。広大な空の下、地上に存在する池だけが静かに水をたたえていました。
ある時、その池に一人の女性が現れました。
彼女はマザー様と呼ばれ、この世界に最初の生命、ハムザを生み出しました。
ハムザは、自分と同じような存在を創り出す力を持っていました。過酷な環境の中で生き残るため、ハムザは数多くの分身を生み出しました。
しかし、分身たちは長く生きることができませんでした。池は灼熱の溶岩や火山ガスによって容赦なく照りつけられ、水が蒸発し、大地は亀裂だらけになったからです。分身たちは、その過酷な環境に耐えきれずに、次々と命を落としていきました。
そんな中、ハムザの分身の中に、アマザと呼ばれる存在が一人現れました。アマザは、他の分身たちとは少しばかり異なり、孤独な価値観を持っていました。
ある年、世界はかつてないほどの熱波に包まれました。まるで地獄絵図のような光景が広がり、生き物たちは絶体絶命の危機に瀕していました。分身たちは、マザー様のそばを離れることを拒み、その場で命を絶つことを決意しました。
しかし、アマザだけは違う考えを持っていました。仲間たちを連れて、地下に避難しようと提案しますが、誰も耳を貸そうとしません。
ハムザもまた、アマザの言葉に心を揺さぶられながらも、マザー様を一人にすることはできないと悩んでいました。
その夜、ハムザは不思議な夢を見ます。
◇ハムザ、
わたしの声が聞こえていますか?◇
「マ、マザー様?」
◇アマザの言ってることは本当です。
手遅れになる前に、早くみんなで地下に逃げてください◇
「俺もアマザの言ってること気になります。
みんなで逃げたいです。
でも、マザー様のいるこの住処から離れたくないんですよ」
ハムザは、マザー様の温かい声に包まれながら、複雑な心境を吐露した。
「この場所はちょうどいい暖かさだし、迷子になることもない。きっとマザー様の加護で守られるって俺の分身達は信じてるんだと思います。
でも、もっと大きな理由があるから、マザー様直々に逃げなきゃ助からないって言われたとしても、俺達は離れられないんです」
◇その大きな理由とはなんですか?◇
「マザー様一人を置いてなんていけないんです!マザー様の命を犠牲にしたく無いんです」
◇わたしは大丈夫です◇
「マザー様の命を犠牲にして僕達だけ生き残っても、そんなの絶対に嬉しくないです!」
ハムザの声には、切実さが滲んでいた。
マザー様は、そんなハムザの言葉に心を打たれながら、静かに語りかけた。
◇では、ハムザ。あなたは、ここに残ってわたしと一緒に命を終えると言うことですか?◇
ハムザは一瞬言葉に詰まった。
すると、どこからともなく、優しいけれど力強い声が響き渡った。
「違います!」
そう勢いよくはっきりと断言した声は、ハムザのものでも、マザー様のものでもなかった。
「アマザ……、どうして?」
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↑【登場人物】
•ハムザ
•アマザ
•マザー様