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第一部 最終話 声聞•集合的無意識 世界は《みえないかたち》で 出来ている

鼻の奥がツンと熱くなる。

うまく表現できないけれど、まるで心に小さな火が灯ったみたいだった。


『パチ……、パチパチ……、パチ』


耳の奥ではなく、もっと心の奥底から、暖炉の薪が優しく燃えるような音が聞こえてきた。


それは、僕の中に眠っていた古い記憶が目覚める音。


次の瞬間、僕の五感全てが、優しく暖かな五色の光に包まれた。


赤、青、黄、緑、紫。それぞれの色が、僕の心の奥底に刻まれた大切な想いを呼び覚ます。


気が付くと辺り一面、

宝石のようにキラキラ無数に輝くいのちが広がっていた。


気がつくと、僕は宝石のようにキラキラと輝く無数の命に囲まれていた。


そこは、幼い頃、星を見るのが好きだった母さんと、満天の星空を見に行った夜の草むらだった。


「ひかる?見える?星空、綺麗ね?」

幼い頃の記憶が、鮮やかに蘇る。

そこには、僕を見つめる優しい母さんの姿があった。


「お母さん……?どうしてここに?」


ごめんね、違うんだ。

僕はキミの記憶を読み取らせてもらったんだ。

僕はダルマという名前の小惑星から来た精霊でね、

キミが生まれるより遥か56億年もの遠い遠い昔からキミとつながっているんだ。

なぜ56億年前かって?

それはね、君たち地球生命の記憶なんだよ。


Vi naskiĝis de mia supernova eksplodo, kiu ekzistas malproksime


超新星爆発によって届けられた元素があったからからこそ、キミ達はこうして生まれてくることが出来たんた。


Carbonaceous Chondrite

君たち地球生命はね、炭素質コンドライトという小惑星から始まったんだよ。

それらの小惑星は、生命に必要な水や有機物を地球に運んでくれたんだ。


そうやって、地球上で最初の生命は誕生したんだよ。

これは、太陽系が誕生した頃の古い記憶なんだよ。


 そう。つまり僕はそのような昔からずっと今まで君たちを見てきたんだよ。



The developmental hourglass model

君たち地球生命はね、進化の砂時計モデルというものに従って発達してきたんだ。それはね、胎児期に刻まれた進化の痕跡なんだよ。


キミ達は最初はみんな同じような形をしていたんだけど、次第に違う特徴を持つようになったんだ。

つまり、キミ達はみんな同じ起源を持っているんだよ。



実はね、キミに大切な事を伝えたくて

僕はここに現れたんだ。



それは、お母さんの声、口調に変わり、

話を続けた。


『ひかる?心は一人一人1つ1つのヒトや動物の中に常に当たり前にあるって普通はそう思うわよね?

でも、実は違うの。

動物はね、相手の反応を理解しやすいように

本能的に『相手の感性を知ろう』とするの。


そして、人が自分の心と感じているものの起源はね、

その瞬間に脳が感じている『相手を知ろう』とする

働きそのものなのよ。


つまりね、本来の意味での『ココロ』っていうのは

常に自分じゃなくて、

相手の事を考えようとする瞬間にだけ起こる素敵な化学反応なのよ。


だからね、誰もがココロを上手に活かすことが出来れば、

例え国や言葉や宗教、考え方が違っても、

どんな人達とだって、

あなたにより身近な視点や小さな視点、大きな視点なんかの違いを超えて、

ちゃんと解りあい助け合うことができるんだから。


泣かないでね。あなたは素晴らしい温かな輪の中に生かされているんだから。

 毎日のあなたを作っている

たくさんの温かいその本質に気付いて、

かけがえのない一日一日を大切に生きてね。


いつでも私は、あなたと一緒にいるからね。いつまでも……』


これはキミのお母さんがキミに残した最後のメッセージです。

お母さんは、僕と同じくらい古い記憶を持っていました。

お母さんは、キミが生まれる前からキミを愛していました。

お母さんは、キミに心という素敵な化学反応を教えてくれました。

お母さんは、キミにこの宇宙の真実を見せてくれました。


僕はここでキミとお別れすることになります。

でも、僕もお母さんもキミとつながっています。 僕もお母さんもキミを見守っています。

僕もお母さんもキミを愛しています。


だから、キミも自分を大切にしてください。

キミも他人を大切にしてください。

キミもこの宇宙を大切にしてください。


それではさようなら。

また会える日まで……






僕はこの時、僕の大切な誰かの身に何が起こったのかなんとなくわかっていた。


僕の瞳からは自然と大粒の涙がとめどもなく溢れだし顔をくしゃくしゃにしていた。

また、僕の中からはその大粒の涙と一緒にすごく優しくそして懐かく清らかな気持ちが自然と込み上げてきていた。


まるで弟子のアーナンダにとっての仏陀の存在がそうであったように……。


心はただ一つの存在に閉じ込められてるわけじゃない。

僕は昔、母に聞いたその言葉を今やっと思い出した。


心は無数の絆と関係性の中で息づいている。

それぞれの出会いや経験が、僕たちのニューロンに色と形を与えて、無限の広がりをもたらしている。一人一人の心は、その織り成す関係の中で、初めて自分を見出すということを。

僕は今それを深く深く実感した。



『それ』は僕の心の一番深くにあって、

僕は幼い頃から、『それ』を一番大切に想い、毎日を一生懸命生きていたはずのに、

大人になった僕はいつしかその新鮮で大切な気持ちを忘れていたんだ。

その『古い記憶』は、僕が限りある人生を幸せに生きる為に一番大切なことを思い出させてくれた。


そして、その『古い記憶』は、僕が今まで知らなかった宇宙の真実も教えてくれた。


これはキミのお母さんがキミに残した最後のメッセージです。

お母さんは、僕と同じくらい古い記憶を持っていました。

お母さんは、キミが生まれる前からキミを愛していました。

お母さんは、キミに心という素敵な化学反応を教えてくれました。

お母さんは、キミにこの宇宙の真実を見せてくれました。


僕はここでキミとお別れすることになります。

でも、僕もお母さんもキミとつながっています。 僕もお母さんもキミを見守っています。

僕もお母さんもキミを愛しています。


だから、キミも自分を大切にしてください。

キミも他人を大切にしてください。

キミもこの宇宙を大切にしてください。


それではさようなら。

また会える日まで……


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