目次
ブックマーク
応援する
6
コメント
シェア
通報

第77話 『応供』 僕は例え死んで生まれ変わっても絶対……、君を忘れたりしない! ②


「イヴ……!」

彼女の体は、光を失い、静かに横たわっていた。

辺りには、生命の色が失われたような、静けさが広がっていた。


昔、どこかで読んだチベットの鳥葬の儀式が、いま、現実のもののように目に焼きついている。どんなに科学文明が発展しようとも、人も所詮、大自然の一部なのだと、改めて思い知らされた。


「離せ!」

僕は仲間たちに引き戻され、住居へと連れて行かれた。




厳しい冬が近づき、狩りもままならない日々が続いた。


久しぶりに口にした肉は、骨にわずかに残るものばかりだった。それでも、僕は感謝の気持ちでそれを食べた。


しかし、周りの仲間たちの表情はどこか冴えない。

口にしている肉を見て僕はふと思った。

これは何かの形に似ている。


最近、ボスの枕元に大切に飾られているものがある。

僕はそれにつけられた跡が、まるで何かを物語っているような気がした。


僕は考えた。

動物が捕獲できないのに肉が食卓に並ぶ理由。

仲間たちが笑顔を見せない理由。そして、

ボスが枕元に大事そうに飾っているものが何を意味しているのか。


僕は彼女と交わした生前の約束を叶えてやることができなかった。

彼女の笑顔を、彼女の温もりを、僕はもう感じることができない。

悔しさと自責の念に打ちひしがれ、僕は夜空を見上げた。

イヴの瞳の色と同じ、澄んだ星々が輝いていた。

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?