「イヴ……!」
彼女の体は、光を失い、静かに横たわっていた。
辺りには、生命の色が失われたような、静けさが広がっていた。
昔、どこかで読んだチベットの鳥葬の儀式が、いま、現実のもののように目に焼きついている。どんなに科学文明が発展しようとも、人も所詮、大自然の一部なのだと、改めて思い知らされた。
「離せ!」
僕は仲間たちに引き戻され、住居へと連れて行かれた。
厳しい冬が近づき、狩りもままならない日々が続いた。
久しぶりに口にした肉は、骨にわずかに残るものばかりだった。それでも、僕は感謝の気持ちでそれを食べた。
しかし、周りの仲間たちの表情はどこか冴えない。
口にしている肉を見て僕はふと思った。
これは何かの形に似ている。
最近、ボスの枕元に大切に飾られているものがある。
僕はそれにつけられた跡が、まるで何かを物語っているような気がした。
僕は考えた。
動物が捕獲できないのに肉が食卓に並ぶ理由。
仲間たちが笑顔を見せない理由。そして、
ボスが枕元に大事そうに飾っているものが何を意味しているのか。
僕は彼女と交わした生前の約束を叶えてやることができなかった。
彼女の笑顔を、彼女の温もりを、僕はもう感じることができない。
悔しさと自責の念に打ちひしがれ、僕は夜空を見上げた。
イヴの瞳の色と同じ、澄んだ星々が輝いていた。