「ところでさ、愛理栖が神様って何か証拠はある?」
このときあたしは愛理栖が答えられるとは思ってなかった。
「実はこの力、むやみに使いたくはないんだけど、真智にだけ特別だよ♪」
「え、ホントに見せてくれるの!?
うわぁ、やった〜♪」
「今から5次元に干渉するね。真智、危険だから少し離れてて」
「うん♪」
このとき、好奇心に駆り立てられたあたしの無垢なハートはドキドキが止まらなかった。
「ねえ真智、5次元って知ってる?」
愛理栖は優しく微笑みながらそう尋ねた。
「ううん、知らない」
真智がいる世界は縦・横・奥行き・時間、
四つの広がりがあるよね?」
「うん、それはあたしもわかるよ」
「だけど、私がいる世界にはもう一つあるんだ。
そこは真智達には想像できないような不思議な世界。
私はその世界を自由に移動したり形を変えたりできるんだよ」
「えっ、そんなことできるの?」
「もちろん♪今から見せてあげるね」
愛理栖はそう言うと、あたしの手を引き、近くの丘の高台まで案内した。
不思議な風貌の女の子があたしの手を引いている姿。町の人たちに絶対怪しまれると思っていたけど、何故か誰にも会わずに丘の高台までたどり着くことができた。
「ねえ、さっきのは愛理栖の力?」
「そう、私の力。普通の人には私の姿は見えていないんだよ」
「すごいね。でも偶然かもしれないし」
まだどこか疑っていたあたしは、食い下がるように聞いた。
「もちろん、見せるのはこれからだよ。
真智、今から絶対に私の手離さないでね」
あたしは愛理栖の握手に応じた。
すると、信じられないことに彼女は高台から崖の下めがけて走り出した。
「ちょっとちょっと、落ちるって!
わあああ、落ちるって!
ちょっとホントに死ぬ死ぬ死ぬ」
こんな非常事態なのに愛理栖が冷静なのはなんでー!?
次の瞬間。急に景色が変わった。
あれ、あれ??崖から落ちそうだった場所から突然、別の場所に移動した。
周りを見渡すと、緑豊かな森や湖や山が広がっている。空気も清々しくて、鳥や虫や動物の声が聞こえてくる。
ドスン!!「イタタタ、痛った〜い!」
あたしは柔らかい草原に尻餅をついた。
「真智、これでわかってくれた?」
愛理栖はそう言って、中腰のあたしに手を差し伸べた。
「うん……わかった」
あたしはさっきの驚きの体験に、しばらく動揺を隠せなかった。
「じゃあ、今から仲間を探しに行こ!」
愛理栖は笑顔であたしに言った。
「その前に、さっきの不思議な力、
もう1回見せて?」
あたしは興味津津で愛理栖に聞いてみた。
「ごめん真智。この力、むやみに使えないんだ」
愛理栖はうつむき加減でバツが悪そうだった。
「どうして?」
「この力を見せる時ってけっこうエネルギーを使うの。
人はエネルギーを補給する為に食べるよね?
人は生きる為に生き物を食べるけど、
私のような5次元人は生きる為に別の宇宙を食べなきゃ生きていけないの」
「そうだったんだ。あたし自分勝手なお願いしようとしてごめんね」
「そんな、大丈夫だよ」
愛理栖は笑顔でそう応えてくれた。
「ところで、これからどうやって仲間を探したらいいの?」
「う~ん……そうだね~」
「ねえ、愛理栖。仲間に条件ってあるの?」
「
「
あたしは首をかしげた。
「私のような5次元人について薄々気付いている人。
真智達の世界ではまだ知られていないけど、
実は私はずっと前から真智達の世界と交流してきたんだよ。
でも、それは秘密にしなきゃいけないことで、一部の人しか知らないの。
そして、その一部の人が私達の協力者になるんだよ」
「なるほど。でも、どうやってその人達を見つけるの?」
「それが難しいところでね、
私は訳あって直接その人達と接触することはできないから、特別な方法で見つけなきゃいけない。
それに、危険も伴うかもしれないから、
信頼できる人しか仲間にできないよ」
「その特別な方法ってどんな方法?」
「それは……」
愛理栖はここで言葉を切った。
彼女はあたしの目をじっと見つめて何かを考えているようだった。
「真智、特別にキミにだけ教えてあげるよ。
でも、これは絶対他言無用だよ。
約束できる?」
愛理栖はそう言って、あたしに真剣な表情で訴えかけた。
あたしは愛理栖の迫力に圧倒され、
なかなか次の言葉が出てこなかった。
「大丈夫だよ。私についてきてくれれば
後で必ずわかるから」
愛理栖曰く、会ったら適正者かどうかすぐにわかるらしい。
また、外国とか宇宙とかそんなものでもないという。
あたし、ほんとにそれ信じていいのかな?
「よう! 真智」
道端で挨拶してくれたのはあたしのクラスの女性担任 谷先生だった。
本名 谷 恵美。
白衣に黒髪ポニーテール、関西弁がトレードマークの女性で真智のクラス担任である。
https://kakuyomu.jp/users/buzenguy/news/16817330660730265777
「ビビ~っときましたー!」
「何なの、その探し方ダッサ〜!
ハハハ、ハハハ♪」
「もー!
だから、ホントは言いたく無かったのに〜!」
愛理栖は顔を赤くすると、
幼い子供が親に駄々をこねるような仕草であたしの肩を叩いてきた。
「あ〜、そこそこ!
そこあたし凝ってるんだよねー」
「真智、お前は相変わらずやな」
「ずぼらな先生には言われたくないですよ」
「ねえ、真智、この女の人は?」
愛理栖はあたしにそう尋ねると、
目の前の谷先生の方を指差した。
「愛理栖、その人一応先生だから
指探すのは止めなよ」
「一応で悪かったな!!
ところで、その
先生にも愛理栖がみえるんだ。
あたしは思った。
「先生、確か一人暮らしでしたよね?
この
今から愛理栖と2人で先生の部屋におじゃましてもいいですか?」
「 散らかってても構わへんならええよ。
ただし……」
谷先生は付け加えた。
「そのかわいい
真智、あんたはあかんで」
「それは無いじゃん、 先生~!」
あたしはすがるように先生に頼んだ。
あたしは愛理栖と先生、 2人にいいように遊ばれながら先生の家に向かった。トホホ。
「なあ真智? うちな、 この
まるでコソコソ話でもするかのように、先生は愛理栖に聞こえないよう、あたしの耳元に囁いた。
「あたしも不思議と昔親しかった気はするんだけど……。
でもよくわからないんです」
そうこうしてるうちに、あたし達は先生の家に到着した。
「あんたら、ちょい待っててや」
そう言って先生はひと足先に部屋に入った。
先生を待つ間、ガチャガチャと慌ただしい音が玄関の外まで響いてきた。
「おまたせ。入ってええで」
先生から呼ばれ、あたし達は家にお邪魔した。
谷先生には、5次元の事と愛理栖が特別な力を持った仲間を集めていることを話した。
「なるほどな。
風変わりな仲間集めしとるんやな、自分。
でも、うちは愛理栖ちゃんを信じるで。
それで、愛理栖ちゃん?
うちはどうすればいいんや?」
「ね~、愛理栖?
だからあたしはまだ話すのは止めとこうって……え?」
「だから、 うちは信じるって言っとるやんけ。
悪いか?」
「いえ、 信じてもらえて話が早くて助かったんですけど、
どうしてすぐに信じてくれたんですか?」
あたしは不思議でならなかった。
「実はな、 この前押入れを片付けてたら全然見覚えの無い絵が見つかってな。
うちは何か普通じゃない事が起こる前兆かと思ってたんや」
「その絵、 みせてもらっていいですか?」
愛理栖がお願いすると、 先生はうちらの前に持ってきてくれた。
その絵には、妖精のような女の子と男の子が仲良く手を繋いだ姿がクレヨンで描かれていた。
あたしはこの絵をみても何も思いだせなかった。しかし、愛理栖には何やら心当たりがあるようでひどく驚いていた。
「この絵に書かれている作者の名前……。私の名前ですよ」
「どうして?
愛理栖っていう名前があるのに、どうしてアイリスが名前なの?」
あたしは疑問を隠せなかった。
「愛理栖っていうのは私のほんの一部分だけの名前。
5次元人としてはアイリスって言うの」
「そうだったんだ。 それでこの絵は愛理栖が描いたの?」
「それが不思議なんだけど、 私もこの絵を描いた記憶はどこにも無いの」
驚きからか、愛理栖は暫く絵を見つめながら思考停止していた。
「きっと考えすぎだよ。 偶然じゃない?」
あたしはそう言った。
「真智はどうして偶然だって思うの?」
「アイリスって響きいいよね?
この絵を描いた幼児が好きな童話の登場人物の名前とかかもしれないし……」
「でもそうしたら、 どうしてそれが先生の家の押入れに入ってるの?」
「ごめん愛理栖、 あたしもそこまではわからない…」
「まあまあ二人とも、
議論はほどほどにしなはれ」
谷先生が仲裁に入った。
「そう言えば真智?
もうすぐ可織ちゃんの命日だね?」
谷先生が言った。
※今回の要約※
真智は愛理栖から5次元の不思議な力を見せてもらい、愛理栖な仲間探しに加わる。二人は谷先生に会い、愛理栖に関係ありそうな不思議な絵を見せてもらう。