神々しい閃光を放つそれは、僕の車のすぐ後ろまで来たかと思うと急におとなしくなった。
きっとその時の僕は、誰かに見られていたら、喜びのあまり親に抱きつく子供のように見えたに違いない。
僕は車から降りると、興奮を抑えきれずに、故障した車のほうへ駆け寄った。
すると、車のドアが開き、女性の顔が現れた。
「あんた、こんな山奥で一体どうしたの?」
薄暗い中で、相手の顔はよく見えなかったけれど、驚きと戸惑いを隠せない様子だった。
「車が故障してしまって…。
本当に困っているんです。
助けていただけますか?」
僕は必死に助けを求めた。
「あたしもあんたが行けなければ帰れないのよ。どこが故障したのか見せて」
お姉さんは懐中電灯を取り出して、車のタイヤを照らした。
「どうでしょう?直せそうですか?」
僕は不安げに尋ねた。
「ねぇ、あんたの車、こんなに狭い道を走るには大きすぎない?」
お姉さんは冷静に状況を判断し、僕に言った。
「すみません。道がこんなに狭くなるとは思っていなくて…。
途中で引き返そうにも、一本道だったので」
僕は申し訳ない気持ちで頭を下げた。
「仕方ないね。今はもう夜だし、霧も出てきている。
あたしがあんたの車を引っ張るしかないわ」
お姉さんは決断を下し、そう告げた。
「JAFを呼んだ方がいいでしょうか?」
「いいよ。こんな細い道では、JAFの車が来るのも大変だろうし。あたしがあんたの車の後ろにつけて、ゆっくりと引っ張るから」
お姉さんは、ロープを持って僕の車に近づいてきた。
「ありがとうございます。どうすればいいですか?」
「あんたはギアをニュートラルに入れて。
あたしがクラクションを鳴らしたら、バックでゆっくりとアクセルを踏んで。
あたしが後ろからゆっくりと引っ張るから」
お姉さんは、僕にわかりやすく説明してくれた。
「わかりました」
「私も何か手伝うことはできませんか?」
一緒にいた愛理栖が、お姉さんに尋ねた。
「ありがとう。でも、暗い中で車の後ろにいるのは危険だから、
少し離れた安全な場所から見ていてね」
お姉さんは愛理栖の心配に応えながら、
注意深く指示してくれた。
けん引作業は時間がかかったけれど、
お姉さんの冷静な判断と協力のおかげで、
車は無事に動いた。
「助かりました。本当にありがとうございます!」
僕と愛理栖は心から感謝の気持ちを伝えた。
「いいよ。それより、今は夜だし、視界が悪いから、車はここに置いておいた方がいいね」
「でも、そうすると、あなたも困ってしまうのでは?」
「あたしの家はここから近いから大丈夫。
今日は特別に、あんたたちを泊めてあげるよ」
お姉さんはにこやかに僕たちを家に招き入れてくれるという。
「ありがとうございます」
僕たち二人は、再び感謝の言葉を述べた。
お姉さんの後について、僕たちは彼女の家に行くことになった。
今日は、思わぬハプニングに見舞われたけれど、親切な女性のおかげで無事に過ごすことができそうだ。
※今回の要約※
自動車が脱線し立ち往生していたひかると愛理栖は、
脱線した自動車を引き上げてくれた女性の家に泊まることになった。