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第9話 カルマ わたしの名前を探す旅③

「どうしたの、愛理栖?」


「ううん、なんでもないです」

愛理栖は少しうつむき加減に首を振った。


「愛理栖、いま何か悩んでるでしょ?」


「え、そんな…?」

愛理栖は、僕の言葉に顔を上げた。


「僕でよければ話聞かせて」


「本当にたわいもない話なんですよ……」

愛理栖は、少し躊躇しながら話し始めた。


「クラスの子とそりが合わなくて、いつも辛かったんです。

趣味が合わないのに誘いは断りづらくて。

断ってからは裏で悪口言われたり、

無視されたりして、学校が怖くて仕方なかったんです。

 いじめを知った両親が私を転校させてくれましたが、転校先の学校でもいじめにあいました。

結局2回も転校させてもらいました。

もうこれ以上絶対家族に迷惑かけたくない。

 だから今は最初からみんなと距離を置いて

一人で給食を食べたり図書室で宇宙の本を読んだりしているんです。

私ってズルくて弱いですよね?」


僕は、愛理栖の言葉を静かに聞きながら

自分の胸に手を当ててゆっくりと頷いた。

そして、愛理栖の手を優しく握りしめながら言った。

「そうか、本当に辛い思いしたんだね。

愛理栖は強いね。

よく耐えて頑張ってきたね」


「こんな話を聞いても幻滅しないんですか?」


「愛理栖、よく聞いて。

みんなそれぞれ違うし、

人は人、愛理栖は愛理栖じゃないかな?

自分の気持ちに素直な愛理栖、

僕はとても素敵だと思うよ。

愛理栖にはこれからたくさん楽しいことが起こるよ。僕も協力する!

だから自信を持ってもいいんだよ」


「愛理栖……、もしかして泣いてる?」

愛理栖は、目に涙を浮かべていた。


「私、ひかるさんの言葉に、

胸がいっぱいになりました。

なんだか心が軽くなった気がします」


「よかった。

僕はいつでも愛理栖の味方だからね」

僕は、愛理栖の頭を優しく撫でた。


二人を乗せた車は希望に満ちた未来へと進んでいく。





「ところで愛理栖?一つ聞きたかったことがあるんだけど、今聞いて大丈夫?」


「いいですが、どんなことですか?」


「『宇宙クラブ』って、具体的にどんなことをする集まりなの?」


「それはですね、仲間を……」


愛理栖が答えようとしたその瞬間、突然

『キュイイイイイイイイイーン!』

という音が響き渡り、僕は強烈な目眩に襲われた。

まるでブレーカーが落ちたかのように、

一瞬意識が飛んだ。


ビビビビビー!


「ノイズ!?」


ねえ、そんなに苦しまないで。早く忘れなよ。

あの娘の邪魔が入る前に。

あの娘は本当のこと知らないんだよ。

だから……、今までの人達との記憶を全て忘れてくれたら、新しい人達との新しい世界がやっと動き出すから……。


誰だ!?


僕に、大切な人達との思い出を忘れろって言うのか!?

だから、消していってるのか?


『そうだよ』


そんなの嫌だ!!


『ち、ちょっと待って、これには……』


ビビビビビー!


またか!?


『誰かの邪魔が入ったみたい。

今からどんなに足掻いても、結果はかわらないよ。

大丈夫、綺麗に忘れさせてあげるから、

もう数日間の辛抱だからね』




そして、その声は聞こえなくなった。


誰だ?聞き覚えのある声だけど、思い出せない……。


※今回の要約※

ドライブの途中、愛理栖はひかるに悩みを打ち明ける。

時間が経ち、話題が宇宙クラブのことになった矢先、ひかるは不思議な現象に遭遇した。

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