オーエンが消え、ディグリス副魔法長は眉間に皺を寄せた。
「プランFってなんだ。オーエンの事だ。大事には至らないだろう」
「ディグリス副魔法長。彼は。ゴブリンは何処に行った」
「オーエンは大丈夫だ。我々はここで野営をしましょう。ここからゴブリンがいる場所まで、そう遠くはないはずだ」
野営と言ったもののディグリス副魔法は、騎士団から離れた所で、プランFと言われたときに渡されたピアス。なんらかの魔導具である可能性が高い。右耳に付けていたら、影が落とされた。
「なんだ。それは」
「ジュノス団長。どうしたのですか。
魔導士なんて、騎士団にとっては気にもならない存在だ。
現に他の奴らは感謝すらしない。ゴブリンの襲撃があったにも関わらず惚けて退治もしない。剣も握れない。あれが騎士。聞いて呆れる」
「そうだな。俺もあいつらに初めて会ったからな。
あんなに情けない奴らだとは思わなかった」
「長文。話せるのか。舌打ちか、肯定が否定しかしない。
恐ろしい獣人団長である。噂しか聞こえて来なかった。全員が初めて会うのか。ジュノス団長」
「ああ」
「面倒な任務だ。オーエンと連絡をとる。聞きたければ、片方するかジュノス団長」
ピアスをディグリス副魔法長はジュノス団長に投げる。素早くジュノス団長がキャッチする。
「ピアスの穴は空いてますか」
「ああ」
頭の黒い狼耳。右の方の耳にジュノス団長がピアスを付けた所を確認して、魔力をディグリス副魔法長が流す。オーエンの声がピアスから聞こえはじめた。