防御魔法に阻まれたゴブリンは、吹っ飛ばされたゴブリンもいれば、ジュノス団長が斬り殺した。結界越しにだが、オーエンには見えていた。ゴブリンが守ろうとしている美しい女性の姿を。女性とオーエンの目が合った。何だあれは。沈ませてしまったくまちゃんが数日前に、話していた事をオーエンは思い出した。くまちゃんの事を気に入っていたのにな。
「女を見た」
「女。なっなにそれ」
部屋でうさぎちゃん人形を作っていた時だ。オーエンにはあの体質だけでなく人ならざるものが見えてしまう。魔力とは違う霊力が付与されてしまったようだ。
「美しい女だ」
「うっ美しい女」
「ゴブリンを従えていた。なんらかの術か。
気を付けろ。僕はもうすぐいなくなるからな」
「いなくなる」
「また代わりを作ればいい」
なんで今更思い出したのだろう。また代わりを作れば良いと言ったくまちゃん。なんで投げてしまったのだろう。代わりなんていない。分かっていたはずなのに。
「ああ。また間違えた」
「泣いている場合ではない。オーエン。なぜ泣いている」
「なっな泣いてなんて、あれ」
声が聞こえる。なんだろう。悲しみや怒り。焦燥。
「た、たすけて」
結界をすり抜けた美しい女。両手を伸ばしオーエンに向かって飛んでくる。
「ディ、ディグリス副魔法長。ブップランFでっです。
すっすすみません。あっあとおおお願いしま、します」
美しい女が、オーエンに触れるとゴブリンと共に姿を消した。