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第8話

 ジェノス団長はうさぎのぬいぐるみを、近くの切り株の上に座らせた。


「ようやく、あたしの話を聞く気になったのね」


 ぴょんと切り株の上でうさぎちゃんは立ち上がる。もう1枚。ディグリス副魔法長に取られたものとは別の地図をポケットから取り出した。ジェノス団長に渡した。


「これは」


「ディグリスが持ってるのが、ここの場所。東地区地図。あんたに渡したのはここの西地区の地図よ。第2班が捜索にあたっている場所。重要なのはここからよ。あんたら本当に運が良いわね。調べていて分かったことがあるの。知りたい。知りたいわよね」


 どうしても、ジュノス団長に知りたいと言わせたいのか。うさぎちゃんは知りたいわよねを繰り返す。


「教えてくれ、うさぎ……ちゃん……」


「「「「言った……」」」」


 2人の会話が聞こえている全員が、思わず同じ言葉を呟いていた。


「ふふ良いわよ。女体のゴブリンが少なくなっているのよ。生まれたゴブリンの中でクイーンが生まれたのよ。クイーンは頭の良いゴブリンだったわ。単身で森にやって来た人間を食べたの」


 食べた。言葉に周りにも緊張がはしる。人の味を覚えた魔物は何度も人を殺す。必ず討伐しなければならない。全滅させれば生態系が狂う。それ以外のゴブリンは数は減らすが全滅させてはならない。


「本当か」


「ええ。東にはクイーンちゃんではなく、クイーンちゃん。旦那候補がいるのよ。西にも。クイーンちゃんは北にいるの。罠を仕掛けているのもクイーンちゃん。罠を乗り越えてやってきたゴブリンと結婚するわってね。2体とも乗り気じゃないの。2体を説得してクイーンを討伐すれば良いのよ」


「無理だ。ゴブリンと言葉が通じない」


「そんな些細なこと。大丈夫よ。オーエンが翻訳の魔導具持っているわ」


 団長とうさぎちゃんの話なんてまったく聞いていなかったオーエン。座り込んで休んだら少し気分も落ち着いた所だった。


「オーエン」


「なっなな。なんですか。ディグリス副魔法長」


「さっさとリュックの中身を全部出せ」


 とても怒っているディグリス副魔法長に逆らえるはずもなく、オーエンは立ち上がり直ぐに中身をひっくり返した。

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