オーエンではなくオーエンの作った魔導人形のうさぎとジュノス団長が話をするという奇妙な光景が出来上がっていた。ディグリス副魔法長がオーエンの話を聞き、団長だけでなく騎士メンバーに言った。
「オーエンから話がある。お願いをしたい。
彼は引き篭もりで、人見知りで怖がりの小心者だ。先程のように過呼吸を起こす。問題児だ。魔法の腕だけは信頼出来る。オーエン。出来る方法で素早く団長に伝えるように」
最後はオーエンに丸投げされた。慌てた伝えに言ったのに、丸投げするのか。ディグリス副魔法長はそうゆう人なのだ。出来る方法で素早く伝える。オーエンには1つしか思いつかなかった。リュックから残ったうさぎのぬいぐるみを取り出して、魔法陣を起動させる。
「おっおお願いね」
うさぎのぬいぐるみが右手を挙げてオーエンの頬を軽く叩いた。
「最初からあたしに頼めば良いのよ。行ってくるわね」
ぽてぽて歩いて行くうさぎのぬいぐるみを見送り、オーエンは地面にぐったり座り込んだ。説明が終わるまで休める。体の力を抜いた。
「あんたが1番偉い人。あたしのことはうさぎちゃんって呼びなさ、ってちょっと何するのよ」
「出来る方法で素早くとは言った。なんだおまえは」
「なによ。離しなさい。ディグリス」
ディグリス副魔法長がうさぎのぬいぐるみの首根っこを持ち上げたので、うさぎのぬいぐるみが暴れた。
「呼び捨てかぬいぐるみの分際で良い度胸だ」
「呼び捨て、上から目線が気に入らないの。なら謝るわよ。ごめんなさい。あんた怖すぎよ。レディーを睨みつけるなんて。あたしの性格は作ったオーエンが組み込んだのよ。オーエンに文句を言って。遊んでる場合。これ見なさいよ」
うさぎのぬいぐるみがお腹のポケットから紙を取り出した。きついずけずけとした物言いは、オーエンが出来ない話し方をさせたい。想いが込められていてこうなったのかもしれない。ディグリス副魔法長はうさぎのぬいぐるみから紙を取り上げた。
「なんだ。これは」
「地図よ。地図。魔法使えるゴブリンは親玉だけよ。
説明するから降ろしなさい」
「ジェノス団長」
「ちっ」
舌打ちしながら、ジュノス団長がうさぎのぬいぐるみを抱き上げる。
似合わねぇ。この場にいる全員の心の声が一致した。